パワープレー。

ゲームそのものを書いていく前に,ちょっと思ったことを。


 NHLのゲームにせよ,冬季五輪などで見られるナショナル・チームのゲームにせよ必ず見られるのが,「パワープレー」であります。


 アイスホッケーと激しいフィジカル・コンタクトは,切っても切り離せない。それだけにペナルティによる時間退場はある意味不可避的でもある。“ショートハンド”という状態ですね。攻め込む側にしてみれば,数的優位の状況が訪れているわけですから,積極的に攻勢を仕掛けていく。当然であります。あるのですが,案外パックを相手ゴールに沈められないケースも多いのであります。トリノ五輪最終日は,アイスホッケーの決勝戦があったと記憶しています。そして,その決勝戦で勝者と敗者を分けたのは,パワープレーをどれだけ巧みに使えたか,という点にあったような覚えがあります。


 ショートハンドに陥れば,自然とイコールの状況の時よりもディフェンスの意識は高くなる。低い位置でパックを保持しているタイミングでは積極的にプレッシャーを掛けてはこないものの,シュート・レンジに入るか,というタイミングではむしろ,かなり厳しいマークを徹底するし,フィジカル・コンタクトも相当激しくなっていく。本当に必要なのは,シュート・レンジ付近でどのように数的優位を構築するのか(相手の厳しいマークを引き剥がすのか),という点にこそあるのであって,ただシンプルに攻撃を分厚くすれば良いというものでもない。


 フットボールの世界でも,“パワープレー”というタームはあります。


 ですが,実際にパワープレーを仕掛ける前段階として,“相手守備ブロックをどう引き出すか”という視点が落ちてしまうと,なかなかパワープレーは成立しない。当然のことながら,やっぱりアイスホッケーと同じでありますな。
 ビッグスワンで行われたゲームで,「勝ち点3」という結果以上に重要な収穫は,「引いてくる相手を釣り出すためのアイディアをどうチームとして作り上げ,共有していくか」ということではないか,と思います。


 それは,相手をショートハンドの状況に追い込まずとも,シュート・レンジでの局地的な数的優位をどう構築していくか,というアイディアを選手個々がイメージすることにつながるだろうと感じます。ショートレンジ〜ミドルレンジ・パスの素早い交換の中からスペースを作り出すのもひとつのアプローチだろうし,そのアプローチが有効性を持たないのであれば,指揮官がゲーム後のショート・インタビューでコメントしていたように,相手を引き出すアイディアをチームとして使っていく。


 あくまでも,最終目標はシュート・レンジでの物理的な数的優位。その作り方はイロイロあるし,自在にアプローチを変えていい。


 そういう,柔軟なゲーム・プランこそが,本当の意味での“パワープレー”ではないか,とちょっと感じたりするわけです。