“ニュアンス”の重要性。

海外に行って,「だ〜か〜らぁ〜!!」というフレーズを,しかも怒りを込めて言ってしまったという経験,ありませんか?


 どうしても,感情をストレートに表現しようとすると,母国語が口をつくものであります。


 トコロはパリのど真ん中。エール・フランスの営業支店であります。


 マルセイユへのエア・チケット(当然,国内線)を買おうと,足を運んだのであります。フランス語がかなりブロークンなので,一抹の不安があるにはあったのですが,「エア・フラの従業員なら,英語くらい解してくれるさ♪」とヒジョーに甘い見通しを立ててしまったのが,敗因でした。単語レベルを組み立てる程度のフランス語では,なかなかマルセイユへのチケットを買いたいという意図は伝わらない。さりとて,英語で話しはじめると,どういうわけかワタシの話すスピードが上がってしまい,相手が理解できないような顔をしてしまう。
 行き止まりか・・・,と思ったときに,思わず口をついてしまったのが冒頭に書いた「だ〜か〜らぁ〜!!」だったのです。これを言ったのは,ほかならぬワタシのことです。


 このときは,たまたま支店にいらした日本人スタッフの方がワタシに気付き,間に入ってくれたために最終的には事なきを得たのですが,ニュアンスを表現できないもどかしさがこれほどのものか,という実感を得た覚えがあります。


 ひょっとすれば,イビツァさんも同じような実感を持っているかも知れません。


 ホントは,通訳さんがフットボールに造詣が深く,ニュアンスを的確につかむことができるなら,イライラすることもないのかも知れません。自分の感情の起伏と同じように,通訳してくれれば。
 でも,一般的な通訳さんは意味を取ることに専念してしまうから,実際に発せられた言葉の裏のニュアンス,その言葉を選び取らせた真意のようなものまでは伝わりにくくもある。本当は,湯浅健二さんがよく言われる「指先のフィーリング」という言葉が示すように,その裏の意味(微妙なニュアンス)こそが最も重要であるにもかかわらず,です。
 こちらの記事(サンスポ)を読むと,英語で直接コーチング・スタッフに対して指導(と言うか,臨時のブリーフィングというか)を行ったのだとか。100%ニュアンスが伝わるはずの母国語ではなくとも,自分が直接コーチに話しかけることで,できるだけ早くコーチング・スタッフがひとつのアイディアを共有するところにまで持っていきたい。並々ならぬ熱意を感じます。


 本当は,指揮官が不自由さを感じないような通訳が必要なのかも知れないけれど,現段階では戦術の早期の浸透こそがファースト・プライオリティでしょう。ニュアンスの重要性にはちょっとだけ目をつぶって,英語で指示を飛ばす,ということも増えてくるかも知れません。