動的バランス。

目指すべきものは“ムービング・フットボール”であり,それは静的なバランスだけで読み取るものではなく,動的バランスで読み取るべき。


 そんなメッセージを明確に打ち出した練習初日だったのではないか,と。


 練習試合に関しては,元川さんのコラム(J's GOAL)にかなり詳しくレポートされていますし,ワタシとしても興味深く読ませてもらったわけでありますが,個人的にはサンスポさんの記事の,

 冒頭8分間の円陣ミーティング中に5色のビブスが渡され、各3人ずつ(黄色のみ山瀬1人)が身につけた。ランニングなどの後、各色1人の計5人が1組になって、主にボールを2個使ってのパス回し。「白→赤→緑…」などのルールに従ってボールを回した。


という部分こそが,最も重要な要素なのではないか,とワタシは感じます。
 確か,昨季のJOMOオールスターでの前日練習でも採用されていたように記憶していますが,これこそが最も重要な鍵を握っているのではないか,と感じるのです。


 エリサルドラグビー日本代表ヘッドコーチは“adaptabilite”(適応性)という言葉でコンビネーション・プレーを重視すること,そして基礎となる素早い状況判断の重要性を表現していますが,オシムさんの発想もほぼ同じようなところにあるのではないでしょうか。
 ボール・ホルダーにはルックアップから誰にパスを出すべきか,という判断スピードを引き上げることを要求しつつ,パス・レシーバに対してはボール・ホルダーの選択肢を広げるべくしっかりとした動き出しの中からボールを呼び込む動きを素早く行う。ユニットとしての判断スピードを引き上げることで,ボールの動きをスムーズなものとする。この大前提をもとに,積極的にひとりひとりのプレイヤーがイニシャル・ポジションを崩しながら攻撃を組み立てていく。
 ひとりひとりが高い局面打開力を持ち,またフィジカル・フィットネスも高い水準にあるのであれば,ともすればイニシャル・バランスを崩さずに勝負をかける,というアプローチも成立するかも知れません。もともと設定されたトライアングルであったり,スモール・スクエアを大きく崩すことなく,パス・スピードをフレキシブルにコントロールすることでリズムを作り出す,という方法論ですね。


 ですが,日本人選手の強みは戦術理解度の高さであったり,俊敏性であったりするように感じます。


 パス・スピードのコントロールも確かに重要な要素ですが,攻撃,守備の基盤となるトライアングル,スモール・スクエアを構成するコンビネーション,そしてひとりひとりのプレイヤーが持っているスピードを柔軟に変化させることで,相手守備ブロックのマークを振り解くことを明確に意図しているだろう,と思うのです。端的に言ってしまえば,ゲームのリズムを掌握するためにコンビネーションを主戦兵器として徹底的に活かす,ということではないか,と。これらのことを考えてみると,導かれるのはムービング・フットボール,というアプローチではないか,と思うわけです。


 まだ初日。ビブを通して透けて見えるアイディアをしっかりと共有しながら,コンビネーションとパス・スピード,そしてひとりひとりが持っているスピードを活かしながらゲームを支配するリズムを作り上げていく,というファースト・ステップが始まった。どういう07スペック(先行開発型)が9日に見られるのか,楽しみであります。