テロワール。

呑助的なタイトルを掲げておりますが。


 イビツァ・オシムさんが目指す日本代表のイメージは,思いのほかワイン用語で説明するのが最も有効かな,という気がします。かく言うワタシはそれほどワインに詳しいわけではないのですが,まあ,大ざっぱに解釈してみますと。


 単純に「テロワール」という言葉を(直訳的に)解釈してしまえば,「土壌」という意味になるのですが,ワインにかかわるテロワールはもっと広い意味を持っているように思えます。当然,土地(土壌)も含まれるのですが,その土壌を育むものは天候であったり,地理的な条件であったり多様です。そんな,地域的な独自性を構成するすべての要素を一括りにするような言葉として意識すべきものかな,と思うのです。


 その地域によって異なる個性が,ワインの個性として反映される。


 前任指揮官は,“ヴィンテージ・イヤー”という言葉を強く意識するようなチーム構築をしていたように思います。確かに,そういうアプローチもあるでしょう。
 ですが,常に才能に恵まれた世代ばかりが出てくるとは限らない。積極的に才能を引き出してやる,というアプローチをかけなければチームとしてのポテンシャルを100%近くまで引き出すことはなかなか難しいだろう,と思うのです。


 こんなことも言えるのではないでしょうか。


 テロワールを構成する要素,その要素がすべてパーフェクトに近い状態で具備されている年など,数えるほどしかないだろうと思います。ですが,同じ土地で収穫されていることには違いない。ならば,ポテンシャルの引き出し方さえ間違えなければ,ある程度のレベルにまでは到達することができる。


 イビツァさんが就任当初にコメントした「日本人らしさ」というのは,選手たちが育っていくリーグ戦の重要性を遠回しに表現したものなのではないか,と感じるのです。リーグ戦という土壌は,クラブを追いかけているサポータ,フットボール・フリークによって豊かな環境へと変化させていくことができる。
 そして,才能は与えられるものだけではなく,積極的に引き出してやるものでもある。そんなことを感じたりもします。


 今回,イビツァさんは自分の目で確認しながら,リーグ戦でしっかりとした活躍をしてきた選手たちを引っ張り上げたものと考えています。ならば,もっと収穫にあたって迷ってもらえるようなテロワール(リーグ戦)をみんなで作り上げていく必要があるはず。本来あるべき強化サイクルが,やっと始まったのかも知れない。


 そんな気がしたりするわけです。