対川崎戦(06−14A)。

確かにリーグ戦の1ゲームなのですが,展開されている内容はカップ戦の内容。


 しかも準決勝〜決勝戦というような,「結果重視」のゲーム内容と相似形を描いている。そんな感じがしました。


 変な表現かも知れませんが,「カップ戦」のような状況に追い込まれたときに,浦和はその持てるポテンシャルをフルに引き出すことができる。そういう見方もできるような感じがします。


 前節・新潟戦はチームとして共有しておくべき戦術的なイメージに,微妙なズレが生じていたように思いますし,ベンチワークも戦術的なイメージのズレを積極的に修正すると言うよりも,そのズレをわずかながらも拡大する方向性に傾いてしまっていたような感じがします。その要因をメンタルだけに帰着させるべきではないだろうとは思いますが,今節を考えると,無意識的であるにせよ,“モチベーション・クラック”の気配があったのかも知れない。そんな感じがします。
 ですが,上位対決となる今節においては戦術的なイメージに決定的なブレを感じることはありませんでした。本来持っているポテンシャル,パフォーマンスを引き出すための条件はしっかりと備えられていた。そんな印象があります。


 もちろん,まだ1トップとトレクワトリスタとの距離感が最適のバランスを見つけ出せてはいない,という印象もありましたが,チーム全体がコンパクトネスを維持できていたことで,全体としての距離感が大きく改善されていたこと,また,相手ボール・ホルダーに対するプレッシャーの掛け方が徹底されていたことで,組織守備面でしっかりとゲームを貫くリズム感が構成できていたことが大きかったな,と感じます。


 単純に最終ラインを低い位置に構えるだけではなく,しっかりとミッドフィールドがボール・ホルダーに対してプレッシングを仕掛け,局面によってはボール奪取を積極的に狙い,あるいはしっかりとパス・コースを限定していくことで最終ラインにかかる守備負担を少なくしていく。そのことによって,相手のミッドフィールド〜前線での機能を奪い,全体としてゲームの主導権を掌握していく。
 とは言え,先制点を奪取するまでのスタイルは,どちらかと言えばプレッシングを前面に押し出したものだったように思う。


 トップが持っている特性を最大限に引き出した形での先制点奪取からほどなく,数的不利の状況に陥ってしまう。それからの浦和のゲーム・プランは,プレッシングという基盤を駆使しながら,同時に最終ラインを攻撃の起点としても位置付ける,フルコート・カウンターをも織り込んでいたように見える。後半開始直後からの積極的な攻勢には,2005シーズンから継続してきている,ショートレンジ〜ミドルレンジ・パスをダイレクト,あるいは少ないタッチでつないでいく中から攻撃リズムを生み出し,相手守備ブロックのクラックを突くというスタイルが表現されていた。その一方で,追加点奪取の場面は,間違いなくフルコート・カウンターを意識したゲーム・プランがピッチ上の選手たちに徹底されていたことを感じさせる。


 ・・・恐らく,今節ほど明確にフルコート・カウンターを狙ったゲームは,最近少なくなっていたように思います。


 ですが,トップのタレントを意識すれば,アクシデントによって陥ってしまった数的不利という状況を考えれば,そして今節のゲームが持つ意味を考えれば,ボール・ポゼッションを背景にパス・ワークで相手守備ブロックを揺さぶるという,いままでのゲーム・プランを徹底して押し出すアプローチを選択するよりも,浦和のDNAとも言える,フルコート・カウンターというアプローチの方がより適合的だった,とも感じるのです。


 いずれにせよ,単なる1/34を超えた意味のあるゲームを制したことになります。


 ですが,この大きな意味を持つゲームを制したことが生きてくるのは,このあとのゲームにしっかりといまのリズムを持ち込むことがあってこそ,だとも思っています。29日まで連戦が続くわけですが,今節のリズムを押し切ることができるかどうか,がリーグ戦全体に影響してくるはず。


 重要なゲームは続いている。そう見た方が良いように思います。