フィージビリティ・スタディ。

「予備調査」,あるいは「実行可能性調査」と表現されます。


 実際に計画を動かす前に,マーケティング・リサーチや技術的な側面からの検討,コスト面(採算面)での検討を行うことで当該計画の実現可能性がどれほど高いものか,チェックするわけですな。


 ということを念頭に置きつつ,こちらの記事(SANSPO.COM)を読んでみますと,犬飼専務理事のコメントは大ざっぱな形ではあるのでしょうが,すでに欧州的なシーズン運営に関するフィージビリティスタディに着手しているようにも受け取れます。


 今回は,ちょっとこの話に関して書いていきますと。


 原則論的なことを言えば,確かに欧州各国でディ・ファクトとなっている秋春開催へと移行することが,さまざまな側面で有利だと感じます。それは国際Aマッチデーに選手を招集しやすくなるというだけでなく,各クラブの戦力補強での自由度が高まるということも同時に意味するように思いますし,選手にとっても海外移籍のタイミングがはかりやすくなる,という具体的なメリットがある話ではないか,と思っています。


 しかし,降雪,という事実は間違いなく秋春開催を導入するにあたって,最も大きな阻害要因であります。


 ピッチに関しては,人工芝をゲームでも使用できるように規約を改正すればいい,という考えもあるし,アウェイ・マッチを集中的に厳寒期にあてていく,という解決策もあるでしょう。あくまで表面的に考えれば,テクニカルな部分で解決可能な問題とも言えます。ただし,競技場を厳寒期にも動かせるように改修するとなると,技術的な話だけではなくて,当然バジェットの問題がかかわってきます。競技場を管理する自治体サイドの協力が得られるか,地域にお住まいの方々の理解が得られるか,という問題もあります。


 さらに,トレーニング・スケジュールを春秋開催の時のようにしっかりと組めるのか,という問題は看過できない部分です。非降雪地ならば計上しなくて済む,練習グラウンドや試合会場の除雪コストをどう考えるか,除雪を回避するために,練習グラウンドを大規模に改修して全天候型の練習場を設えるとして,そのエクストラ・コストをどう消化するか,などという問題があるように感じるからです。


 一般的な営利社団法人とは異なり,公的な側面が非常に大きいのがフットボール・クラブではありますが,それでも営利社団法人であることには変わりがない。コストがプロフィットを大きく上回るような状況に立ち至れば,フットボール・ビジネスから撤退するという決断も考えておかなければなりません。


 そうなってくると,現実的な落としどころとしては“ウィンター・ブレイク”を挟むことで,厳寒期における降雪地での開催をできるだけ抑え込む,という方向性があるのかな,と。例えば,イングランドでは8月第3週の土曜日からシーズンがスタートしますが,降雪期の開催を回避するために,このスタート時期を2週間〜3週間程度早めておく,という方法もあるかな,と思うのです。


 確かにメリットの大きい秋春開催ではありますが,フィージビリティスタディでは特にコスト面,あるいはマーケティング面で問題が出てくるのではないか,と感じます。その問題をクリアする道筋が見えてきたときには,ひょっとすると欧州的なスケジュールへと移行できるのかな,と思うのです。


 そうそう,本当に“フィージビリティスタディ”という発想が必要なのは,JFAでしょうね。


 商品にせよ,サーヴィスにせよ最も重要なのは,「設計段階」のはずです。


 そのときに,ポジティブな方向,ネガティブな方向の両面で,どれだけの可能性を思い浮かべることができるのか。そうなれば,実際の商品を製造し,あるいはサーヴィスを提供する相手方に対して具体的な要求を出すことができる。依頼主がボンヤリしていては,その依頼を受けた現場責任者だって困ってしまう。現場責任者にとっては,4年という時間は相当なロングタームに見えるけれど,依頼主に関して言えば,「その先」を常に考えていなければならない。本来,技術委員会は,そんなフィージビリティスタディを繰り返す組織でもあるべきかな,と。


 以上,ちょっとオマケでした。