対新潟戦(06−13A)。

本来ならば,スタート・ダッシュを決めなければならないタイミングであるにもかかわらず,先頭のレーシング・マシンが一気に減速したことに対応できず,しかも冷静さを失ってシフト・ミスまでも犯す。


 あくまでも限定的な印象ではありますが,完全に,スタートの主導権を相手に握られたローリング・スタートを見ているような感じがしました。


 まず,前半12分という早い段階で先制点を奪取されたことが,チームに大きく影響したような感じがします。


 浦和の基本的なスタイルとして,前半早い段階で先制点を奪取し,ゲームのリズムを掌握するという部分があります。そのための基盤となるのは,ミッドフィールドとアウトサイドとの連携であり,安定したポゼッションからボールを積極的に動かし,相手守備ブロックを縦横に揺さぶっていくことのはずなのですが,今節はそんなスタイルが影を潜めていたような感じがします。加えて,先制点を非常に早い段階で奪われたことによって,ゲームを支配しているリズムを取り戻すための時間がかかってしまった,ということになろうかと。


 また,“パワープレー”も必要な要素だとは思うけれど,それ以前の問題としてしっかりとボールを動かしながらひとが動く,という基盤をもういちど徹底すべきではないか,と感じます。


 前線に向かってシンプルにロングレンジ・パスを繰り出す。


 このことだけを取り出せば,決して悪い部分はないのですが,そのあとの戦術的イメージをどのように描いているのか,いささか不明確な部分が多い。スピードという武器を持つFWが復帰を果たしたことで,そのスピードを活かす攻撃を指向した,という見方も成立するのだろう,とも言える。ならば,達也選手の仕掛け〜フィニッシュを最終的なイメージとして,どういう組み立て方が良いのか,という,本来浦和が得意としていたはずの「逆算的な発想」があって良いのだが,その逆算が実際にピッチ上で表現されていたとは言いがたい。
 達也選手の特性を最大限に引き出すのであれば,ハイボールやロングレンジ・パスだけに多くを依存するのではなく,ミッドフィールドでのパス・ワークからトップスピードを活かした攻撃へとシフトする,というイメージの方がより適合的ではないか,と感じる。
 また,トレクワトリスタと前線が構成するトライアングル,その距離感が適正であったか。彼らには,ボールを巧みにアウトサイドへと散らす役割のほかに,リフレクションに鋭く反応しながら積極的にゴールを陥れる役割をも期待されているはず。


 これらのことを考えると,確かに“3−6−1(3−4−2−1)”はある程度の成果を収めているパッケージではあるけれど,攻撃的タレントの特性を最大限に引き出し得るパッケージなのか,再確認する必要があるように思うのです。


 ・・・次節の相手は,現在首位に立っている川崎。


 単なる1/34以上の意味を持つゲームのひとつですし,ここでの勝ち点は通常の倍の意味を持つ。勝ち点3を収めることができるならば,その勝ち点は勝ち点6の意味を持つ。今節のようなミスフィットがあってはならないゲームです。
 すべてのタレントが,100%のパフォーマンスを発揮できる環境がピッチ上に整備されるかどうか。それだけのことで,スタートの失敗は取り戻せるはずだと考えています。