フルコース・コーション。

いつものように,屋号関係の話からはじめますと。


 “フルコース・コーション”というのはアメリカン・モータースポーツの用語であります。


 たとえば,レーシング・マシンがコンクリート・ウォールに激突してパーツがコース上に散乱してしまったとか,走行中にエンジン・ブローに見舞われたマシンによって,相当量のオイルがコースにまき散らされたことで,レース・トラックの安全性を確保する必要が出たときにコース全域に黄旗が提示されること,を言います。


 セイフティ・クルーやクリーンアップ・チームが作業を開始すると同時に,作業の安全を確保するべく,ペースカーがレース・トラックに飛び出し,コースに出ているレーシング・マシンは隊列を組んだまま周回を重ねます。


 しかし,ピットレーンがクローズされていなければ,ピットへと戻ることも可能です。サスペンション・セッティングの微調整やウィングの角度調整,タイア交換や燃料補給など,必要なサービスを受け,再びトラックへと戻っていく。この間,周回数のカウントはありませんから,このタイミングをどれだけ戦略的に使えるか,がチームには問われているわけです。


 ・・・相変わらず長い前置きでありますけども。


 ちょうど,「中断期間」がフルコース・コーションのタイミングに見えるわけです。


 ワールドカップを「障害物」扱いするのもどうか,とは思うけれど,それまでのリーグ戦でのリズムを良くも悪くも断ち切る「阻害要因」であることには違いありません。それまで高負荷をかけていたものが,急激に負荷が小さくなったことでリズムを崩してしまうことも十分にあり得ます。その一方で,チームのコンディションを冷静に見直し,再チェックをかけるための絶好の期間とも言えるわけです。


 この期間をどう使ってきたか,が19日の“グリーンフラッグ(本格的なリーグ戦再開)”に向けて大きな意味を持つような感じがします。確かにワールドカップも面白いけれど,「喜怒哀楽」を共有できるのは我が愛すべきクラブだけ。その「日常に巧みに組み込まれた非日常」がやっと戻ってくる。


 フットボールの本当のお楽しみはこれから,という感じであります。