Avant la Finale.

ちょっとだけ,フランス目線で書いていこうかな,と。


 これほど,ドラマティックな展開を予想したひと,いるでしょうか。


 むしろ,欧州予選での苦戦を考えれば,ファースト・ラウンドでドイツを去ることを予想したひとの方が多かったのではないでしょうか。
 実際,ファースト・ラウンド(グループリーグ)はアウトサイダー的にはスリリングな展開だったように感じます。スイスとの初戦をドローで終えると,韓国との第2戦も続いてドロー。どこかで,「勝ち方を忘れた」かのような2002年大会の悪夢がよぎる展開ではありました。ちょっと屋号的な表現を使えば,しっかりとポテンシャルを秘めたエンジンなのだけれど,実際にそのエンジンを扱うドライヴァ自身がしっかりとアクセルを踏み抜けない,そのためにドライヴィング・リズムが微妙に崩れているような感じがしていたわけです。


 そんなネガティブな流れを断ち切ったのが,グループリーグ最終戦である対トーゴ戦であります。


 やっとドライヴァ自身が「踏み抜く」ことができたというか。そうなってくると,もともとポテンシャルのあるエンジン(チーム)ですから,“オン・ザ・カム・アクション”へと持ち込むことができる。
 セカンド・ラウンド初戦では,ファースト・ラウンドで好調さを見せ付けていたスペイン代表を撃破し,リズムに乗ったことを実感させる。そして,QFでは優勝候補最右翼との評価を受けていたブラジルを抑え込むことに成功する。そして,続くSFでもポルトガルを相手に安定した組織守備を背景に勝負強さを見せ,オリンピアシュタディオンへの切符を手にする。


 短期決戦では,一気呵成にトーナメントを駆け抜けられるだけの加速力,あるいは爆発力が必要だと思っています。ファースト・ラウンド,特に序盤を見る限りではその爆発力を持ち合わせているとは思えなかったのですが,トーゴ戦,そしてセカンド・ラウンドのスペイン戦でしっかりと加速態勢に入ることができたようです。
 また,組織的な守備応対を基盤とする勝負強さをしっかりと維持していることは大きな意味を持っているように思います。爆発的な攻撃力を擁する,と言うよりも,チームとして相手ボール・ホルダーをどう追い込んでいくか,どうボール奪取へと持ち込んでいくかという戦術イメージがしっかりと共有されていることが,今大会での躍進を支えているように思います。


 その戦術的イメージの共有に,“ジネディーヌ・ジダン”という存在がある可能性は否定できません。しかし,それだけが躍進を支えた大きな要素だとも言えないように思います。むしろ,大会を通してもチームは進化し,成長を続けていくことのできる存在であるということを示してくれたことの方が,圧倒的に重要であるように感じます。


 数時間後,ベルリンで展開されるゲーム。勝利の女神がどちらに微笑みかけるのか,ということも気になりますが,それ以上にこの一戦が“Good Game”(激しく,そしてできるならばフットボールの魅力を存分に表現してくれるだけの美しい真剣勝負)になってくれることを期待しています。