横浜FC対東京ヴェルディ1969戦(06−J2#25)。

守備意識を徹底することでチームの基礎構造をあらためてしっかりと意識すること。


 恐らく,ヴェルディのゲーム・プランはそんな部分にあったのではないでしょうか。前半をスコアレスで折り返したことで,そのゲーム・プランはより明確なものとなったように感じます。勝ち点3を奪取されるリスクを背負うことよりも,勝ち点1を確保するという方を選んだと言いますか。


 確かに今節を無失点で切り抜けたのはひとつの収穫なのでしょうが,横浜FCの拙攻に助けられたという部分も相当程度あるように思います。


 SBによるアウトサイドからの突破が前半においては機能せず,トップがアウトサイドに流れてウィンガーのような動きをしていたくらいですから,横浜FCの攻撃は中央に偏っていたと見て良いように思います。また,ボール奪取から攻撃への切り替えにおいて,中盤,SBが積極的に攻撃参加をかけるという意識が今節に関しては薄かった。トランジションと同時にアクションを起こす感じが薄いと言おうか。そのため,前線がポストになったとしても,ボールを預けるべき適切な距離感を持った選手が周囲にいない。ロングレンジ・パスを攻撃の端緒として意識しているだろうことは理解できるものの,実際問題として機能していないような印象が強かったように感じます。


 ただ,攻撃面で物足りなさが残ったのは,ヴェルディも同様だったように感じます。


 横浜FCのSBが低い位置を維持していた,ということは,アウトサイドのプレー・エリアが広かったということ。にもかかわらず,アウトサイドへのボール展開が少なかった。アウトサイドが早い段階からセンターへと絞り込んでいく,あるいは縦に突破を図る中から横浜守備ブロックを揺さぶる余地があったにもかかわらず,攻撃の意識がセンターに偏っていた。また,攻撃時のイメージが十分に共有されていないのか,パス・レシーバがいないエリアにパスを供給したり,動き出しがズレを見せているという局面も多かったように思います。加えて言えば,中盤でボールが落ち着かないことが多い。横浜FCのアプローチが早く,プレッシングが厳しく掛かっていた局面もあったかとは思いますが,ゲーム全体から見れば,横浜FCはポジショニングによってパス・コースを切りに行くという感じだったかと思います。にもかかわらず,1対1の局面だとボールを失うことが多かったようにも感じます。


 ごく大ざっぱに言えば。


 前半はアタッキング・サードへ良い形で攻め込めていない,という感じですよね。しかも,ミスによってターン・オーヴァを受けている。そのために,ボールがニュートラル・エリアだけで展開されているような感じを強く受ける。しかも,ボールを大きく展開するのではなく,相手が密集しているエリアを強引に突破しようと意識しすぎているものだから,悪循環が加速する。後半も,前半の悪いリズムを引き継いでしまっているために相手のミスを的確に突くことはできても,そこからはじまる攻撃を波状攻撃へと持ち込んだり,しっかりとしたフィニッシュへと持ち込むことができない。


 正直なことを言えば,ちょっと緊張感という意味でも物足りないスコアレス・ドローであったような感じがします。