基本戦略。

アンチ・スペクタクルであるとか,エンターテインメント性が感じられないとか。


 いろいろな(特にネガティブ方面の)評価が想定されます。


 確かにそういう部分もあるでしょう。


 しかし,プロフェッショナルは「結果」を出すことが大前提だろうと同時に思っています。そのためには「現実主義的な」思考が重要な要素となってくる。前田監督がし続けているだろうブレイン・ストーミング,その基盤には間違いなくそんな現実主義的な発想があるに違いない。


 ただ,現状のディフェンシブなスタイルで終わる気がないだろうことも,同時に感じることができました。


 葉っぱでのゲームでは,守備ブロックが非常に安定していることが印象に残りましたが,最終ラインが積極的にラインを上下させるということがない,という部分も印象として残っています。攻撃に連動して大きくラインを押し上げていく,というよりもリスク・マネージメントを優先して全体のバランスを守備方向へと振っていることが明確に看取できるポジショニングだったように思います。
 中盤も積極的にボール奪取を仕掛けていくというよりも,いかに最終ラインが安定して守備応対を相手攻撃陣に対してできるか,という部分を意識したプレーをしているように感じます。ハーフコート・カウンターを明確に狙うプレッシングというよりも,フルコート・カウンターを明確に意識し,パス・コースを切るような形でのアプローチを徹底されているような感じに見えました。


 柏の葉での水戸のゲーム・プランは,アウェイでの戦い方として十分に完結しているものだけれど,それだけで終わるものでもないようにも感じます。
 今節では安定した守備応対から,ロングレンジ・パスをアウトサイド,あるいはセンターに繰り出すことで攻撃をはじめる形が徹底されていましたが,この水戸の守備バランスを「基盤」として捉え,そのうえにどういう攻撃を作り上げていくのか(あるいは,その可能性があるのか)ということを考えてみると,例えば,守備ブロックが攻撃に先行してディフェンス・ラインを引き上げていくというモーションがロングレンジ・パスと同時に仕掛けられるようになってくると,現状のスタイルは攻撃的なものへとシフトするように感じるのです。


 当然,限られたりソースで「勝ち点3」という結果を追い求めようとすれば,現実主義的な戦略を採用する必要に迫られます。戦力補強をしようとしても,資金的な裏付けがなければ難しいし,となれば現有戦力でのパフォーマンスを最大限に引き出すというアプローチをとらざるを得ない。
 とは言え,前田監督がチームに落とし込んでいるゲーム・プランは十分以上の発展性を秘めたものであるように思います。その意味で,「水戸ナチオ」と言われるスタイルは基本戦略として考えるべきではないか,と個人的には感じます。そこから発展させていくためには,いろいろな外的要因が必要かも知れないけれど,決して守備だけで完結するものでもなさそうです。


 対戦相手である柏もそうですが,監督の手腕を強く感じさせるチームでした。