立ち位置。

本大会が終わるまでは封印しておこうと思っていたことを,終戦に際して書いておこうと思う。


 代表チームは「日本代表」というクラブ・チームが活動しているものではない。


 日本代表に選出されるのは,リーグ戦で活躍している,高いポテンシャルを秘めた選手たちであり,あるいはリーグ戦から海外へと打って出た選手たちである。それぞれに「帰る場所」を持っている。そして,帰る場所には選手を見守るコーチング・スタッフ,同じトレーニング・グラウンド,ホーム・スタジアムのピッチに立つ選手とクラブ・スタッフがいる。そして,クラブと喜怒哀楽をともにしながらスタジアムへと足を運び続けるサポータ,ファンがいる。


 そのサポータ,ファンが,代表に選出された選手に対して誇りを感じられなければおかしい。


 選手個人として持つだろう代表選出に対する誇り,そしてフットボール・クラブとして代表へ選手を輩出することに対する誇りが,サポータ,ファンの誇りと直結していて良いはずだと思う。リーグ戦こそが,代表チームを作り上げるための重要な基礎構造であるならば。


 その基盤をどこかへ忘れてはいないか。


 映像,活字を問わず日本代表,というチームがさもあるような言い方をするメディア。
 代表チームだけを追いかけ,クラブ・チームには興味がないかのような態度をとるフットボール・ファン。
 逆に,クラブ・チームだけを追いかけ,代表チームには斜に構えたかのような態度をとるフットボール・フリーク。


 どの姿も,選ばれた選手たちに対して,敬意を欠く行為ではないか。


 イングランド戦が行われるスタジアムで見られる無数のセント・ジョージフラッグ。そこには,自分たちが日ごろ追いかけているフットボール・クラブの名前や所属しているサポータ・クラブの名前など,いろいろな文字が書かれている。自分たちの立ち位置を明確にしながら,それでも代表チームという一点でまとまりをみせる。


 “The Pride of URAWA”。


 違和感を持つひともあるかも知れない。
 だが,個人的には良かったと思う。代表選手を3人も輩出しているのは,浦和という街の誇りであり,クラブを追いかける人間の誇りでもある。そのことを端的に表す言葉だろう。ほかのクラブのサポータも,いつも使っている横断幕を持ち込み,スタジアムに堂々と掲出してほしかった。日章旗でなくとも,ブルーを基調とするフラッグ,横断幕でなくとも大きな意味を持つものと思う。立ち位置が違おうと,目指す方向が同じならば。


 ひとりひとりのサポータが「立ち位置」を明確にすることで,代表チームがリーグの誇りを背にして戦う存在である,ということが明確になるのではないか。代表が根無し草のような存在にならないためにも,クラブ・サポータの役割は大きくなりこそすれ小さくなることはない。
 98年からの8年間で成長した部分も確かにある。その部分を大事にしながら現実を受け止める。そして,それぞれの立ち位置でクラブを厳しく,優しく見つめていくことで結果的に代表チームが強くなっていくはず。代表の基盤を支えているのは自分たちの国のリーグ戦,という矜持を持ち続けなければならない。そう思う。