Impossible is nothing.

よく,“upset”という言葉を使います。


 例えば,天皇杯だったりFAカップだったり。


 カップ戦では,下部リーグに所属するクラブであったり,アマチュア・クラブが躍進を遂げるケースが時にあります。そんなときの表現が“upset (great upset)”だと思うわけです。圧倒的な実力差が所属リーグの違いとして厳然と存在しているのですから,この表現がおかしいとも思いません。むしろ,この言葉は勲章として意識してほしい,と思うくらいです。


 ただ個人的には,国際試合の舞台で“upset”という言葉は使いたくないな,と。


 確かに,何も成し遂げていないチームが歴史,伝統と実績を積み重ねてきているチームと対峙するとき,どこかに下馬評がちらつき,「順当に行けば・・・」というフレーズが頭には浮かびます。upsetを否定するときの図式と同じように。ですが,それは言い訳を用意することと同じではないでしょうか。実績あるチームを知らず知らずのうちに上位に考え,そうではないチームを下位に考える。


 国際舞台において勝負事を決めるのは圧倒的な実力差ではなく,小さな局面ベースでの微細な差,その差を的確に自分のものとすることができるかどうかだろう,と思っています。第三者評価である実力差を真正面から受け止め,萎縮する必要などない。過去において結果を引き出し,実績を積み重ねてきたチームであろうと,常に勝ち続けることができるとは限らないし,同じように予選を勝ち抜いてきたチームが前にいるに過ぎない。


 相手に対する敬意は,持っていて当然でしょう。しかし,相手に対する敬意は,全力で相手に向かっていくための準備動作でもあるか,と感じています。
 相手に隙があるならば,その隙を徹底的に突いていけばいい。自分たちのフットボール・スタイルを徹底して押し出してほしい。「何かを起こす」という前に,目の前にいる相手に対して全力でぶつかっていく。そんなファイトを繰り返していく中で,活路を見出していけばいい。


 その結果として,誰かが“upset”と言うならば,それはそれで構わない。「順当勝ち」という言葉があるのならば,その裏返しである「番狂わせ」(upset)という言葉もまたあることをハッキリと示してほしい,と思っています。


 サプライヤーさんも言っているじゃあないですか。“Impossible is nothing.”ってね。