Angleterre v. Trinite et Tobago (Groupe B).

イングランド代表のスキッパーを務めるディビッド・ベッカム


 彼がインタビューを受けている映像を見ましたが,チームが「戦う集団」として非常に良いコンディションにあるだろうことがうかがえました。
 ・・・なかなかに強烈なコックニーですけどね,相変わらず。


 それはともかく。


 「攻撃力」であったり,「破壊力」という部分ではまだ“100% fit”という評価をするには早いようにも思います。前半においては,好機があったにもかかわらずクラウチがフィニッシャーとしてのタスクを果たせなかったり,もうひとりのストライカーであるオーウェンとのコンビネーションが完全に熟成されているような印象は薄かったように思います。
 それでも,初戦では守備的なバランス感覚を重要視したためか,あまり前線に顔を出すことのなかったランパードが積極的にミドルレンジからシュートを放ち,ゴールネットを揺らす可能性を感じさせる戦いぶりであったように思います。


 対戦相手であるトリニダード・トバゴは“フル・カウンター”を意識したゲーム・プランを描いていたように感じます。


 中盤でのボール奪取という部分にはそれほどの比重を置かず,むしろ最終ラインが安定して守備応対を繰り返せるように中盤がプレッシャーを掛けていく,というようなイメージで見ていました。そして,トリニダード・トバゴは数少ないチャンスの中からイングランド・ゴールを脅かします。


 イングランドの攻撃リズムに変化が出てくるのは,58分の戦術交代がきっかけだったように思います。オーウェンに代えてルーニーを投入,また,キャラガーに代わりレノンを投入することで,攻撃シフトを微妙に変化させたわけです。
 イングランドの攻撃を支える大きな要素は,当然ながら右ウィングのベッカムから供給される正確なクロス,そしてそのクロスに反応するフィニッシャーのオフ・ザ・ボール・モーションだと思います。トリニダード・トバゴはその要素を徹底して封じるプランを押し出してきた。イングランド・サイドから考えれば,SBであるキャラガーとベッカムが積極的にポジション・チェンジを仕掛けながらトリニダード守備ブロックを崩しに掛かるという時間帯がちょっと少ないような感じがしたわけです。ベッカムがセンターに絞り込むような動きを見せる一方でキャラガーが縦に鋭い突破を見せる,という局面も確かにあったけれど,そういう形が多く作れなかった。
 ちょっと硬直したようなリズムが戦術交代によって変化し,先制点奪取はやはりベッカムのクロスからクラウチが高さを活かしたヘディングから生まれます。そして,ランパードミドルシュートによって追加点を挙げ,2−0で勝利を収めたわけです。


 ・・・グループBのもうひとつのゲームによって,イングランドはセカンド・ラウンド進出を決めたわけでありますが。


 まだ,すべてがかみ合っていると言うには難しいものがあるけれど,少なくとも非常に集中した守備ブロックを背景とした戦いぶりを示しているな,という感じがします。トリニダード・トバゴが非常に鋭いカウンター・アタックを繰り出した時間帯がありましたが,イングランド守備ブロックはギリギリのところでその攻撃を跳ね返す。その集中した守備応対は,「戦う集団」としてチームのコンディションが上昇基調にあることを示しているように思います。


 この流れをどれだけセカンド・ラウンドでも持続できるか。期待しております。