熱痙攣と総力戦。

確かに思い返してみれば,プレーを巧みに切るという場面には出会わなかったような。


 NHK解説委員である山本浩さんのリポートを見ていて,ハッとしましたね。


 山本さんによれば,ピッチレベルでの気温は30℃を超え,ヨーロッパではあまり感じることのない「熱さ」を伴った風が吹いていたのだとか。であるならば,こまめに水分を取っていかないと,突然のコンディション不良に襲われることになる、かも知れない。坪井選手が両足に異常を訴え,ピッチサイドへと出ていったときの映像がダイジェストでも流れていましたが,しっかりと見返してみるとかなりの発汗が認められます。当然,緊張も作用していたでしょうが,水分摂取を上手くできていなかったのだとすれば,軽度の熱中症である「熱痙攣」を疑いたくなります。実際問題として,坪井選手は両足に痙攣を訴えていたようです。夏季五輪という過酷な環境でマラソン・ランナーに襲いかかる症状にあまりにも酷似しているような気がするわけです。


 にもかかわらず。


 指示を徹底しておいて良いはずの,こまめな水分摂取という部分が徹底されていなかったようです。山本さんは「危機管理」という言葉を使っておられましたが,まさしくそういう部分でも後手を踏んだ。何のために,ドクターが帯同しているのか。暑熱馴化をするようにコーチング・スタッフに対してリコメンドするでもない。カイザースラウテルンに乗り込んだ時点で気温変化から想定できる事態を洗い出し,水分補給に関する指示徹底などをすべきところ。にもかかわらず,実際に熱中症を疑うべき事態を引き起こした。


 本来,総力戦ではやってはならないミスをチームとして犯していた。スタッフを含めて,「総力戦」という言葉の意味をもういちど確認しておかないといけない。そう思います。