Angleterre v. Paraguay (Groupe B).

プレ・エントリの時には,オレンジ軍団だけがセカンド・フェイバリットであるかのような書き方をしましたが。


 ここに結構お越しの方はワタシがドコびいきか,イヤと言うほどお分かりか,と思います。


 ですが,この初戦に関しては短信扱いでいいかな,と。それゆえ,時系列的な順番が一致していませんがご容赦を。


 今大会におけるスリー・ライオンズは自国開催であった1966年大会以来の優勝を狙い得るチーム,という評価を得ています。確かにスコッドを見れば,そんな下馬評も真実味を持っているような気がします。単純な最強軍団というのではなく,ある種のバランス感覚を合わせ持ったパッケージと言いますか。
 ただ,ゲーム開始直後と表現すべき時間帯での先制点奪取によって,ある部分ではゲームのリズムがスローな方向へと流れてしまったことは否定できないように思います。本大会が開幕するまでは,初夏とは言いかねるようなウェザー・コンディションだったものが,大会日程がはじまるとまさしく初夏,あるいは夏のような気象条件にさらされる。あまり飛ばしたくないという意識が働いたのではないか,と感じる部分があります。それゆえ,必ずしも持っているポテンシャルを十分にヴァルドシュタディオンに解き放ったという印象は薄い。むしろ,「慣熟運転」のような形で初戦を戦っていたような感じがするわけです。
 加えて,ゲームのリズムをスローなものとしながらイングランドの焦りを誘い,あわよくばスコアをイーヴンに引き戻し,勝ち点1を確保する,というようなゲーム・プランを描いたかも知れないパラグアイの術中にはまり込んでいってしまったような感じもしています。


 それでも,クラウチオーウェンが2トップを組んでいた前半はリズムをつかんでいたようにも思うのですが,後半10分過ぎの戦術交代以降,前線でのボールの収まりが悪くなったようにも思います。


 クラウチが1トップ的に位置する,ということは,ターゲットであるクラウチと,彼がホールドしたボールをフィニッシュに持ち込むべきプレイヤーとの距離感が重要な要素になるように思うのだけれど,その距離感があまりいい状態に保たれてはいなかった。セカンド・ストライカーという位置づけでアタッキング・ミッドフィールドが考えられていると言うよりも,どちらかと言えばウィングという感じで捉えられるから,あまり中央に絞り込んでくるということはイメージしにくい。特に右ウィングは中央からアウトサイドに開きながらリズムを作り出すという部分が強く感じられるだけに,余計に絞り込んでくる動きというのは意識しにくい。となると,後方からの押し上げが生命線となるから,どうしてもボールを落としてからのタイム・ラグが生じてしまう。ランパード,あるいはジェラードが積極的に高い位置を取れればミドルレンジからゴールを脅かすことも可能だけれど,そういう形へと持ち込むことはなかなかできなかった。タイム・アップが見えて来た時点でのハーグリーブスの投入によって,チームのプライマリー・バランスは間違いなく好転したように思うのですが,本当ならばオーウェンを下げた時点で一気にチームとしてのシフトを82分以降の形へと変えるべきではなかったか。


 また,後半にはパラグアイがラッシュを掛けてきた,という部分も大きく関わってくるのですが,(否応なく)リトリートから攻撃を組み立てるという時間帯が多くなってきたようにも思います。それでもディフェンシブ・ハーフと最終ライン,そして時間帯によってはオフェンシブ・ハーフも含めて構成される守備ブロックが決定的な破綻をきたすことなく,90分プラス守備応対を繰り返すことができた,というのは大きな収穫だったと思います。


 ・・・ゲーム内容を言い出せばきりがないけれど,基本的にグループリーグでは初戦を制することで第2戦,最終戦の戦い方の選択肢を広げることが,最も重要な要素となる。その意味で,どういう形であるにせよ,「勝ち点3」を奪取できたことは間違いなく大きい。


 本格的にイングランド代表がポテンシャルを解き放つのは,恐らくは第2戦以降。そこからの上昇カーブがどういう曲線となるのか,イングランドびいきとしては気になります。