横浜FC対草津戦(06−J2#21)。

フットボール”という競技には,“ミス”が付きものです。


 そのミスをどうマネージするのか,という部分が勝負を分けるという考え方も十分に成立すると思います。攻撃を仕掛ける立場から見れば,どう相手のミスを誘うかということであったり,あるいは相手のミスをどれだけ隙なく狙うことができるか,ということだろうと思いますし,守備応対をする立場から見れば,相手ボール・ホルダーにプレッシャーを掛け,相手のミスを誘い出すことでボール奪取を狙ったり,あるいはボール・ホルダーへのアプローチなどで発生した細かいミスを致命傷としないようにカヴァしていく(=フィニッシュに持ち込ませない),という部分があるかな,と。


 ひとつの側面においてはリアクティブな感じもしますが,もうひとつの側面においては積極的に仕掛ける部分もある。ちょっと神経戦のような部分も感じますが,シビアなゲームというのは往々にして“ミス”が勝負の帰趨を決定付けるような気がします。


 そして,よく言われる「勝負強さ」というのは,“ミス”をどう自分たちの味方に付けられるか,ということにも求められるような感じがします。
 リーグ・テーブルを見るに,そんな勝負強さを今季の横浜FCは身に付けているに違いない。そう考えて中断期間中のディビジョン2,2発目はテーブル上位に付けている横浜FCを見に,三ツ沢へと足を向けてみることにしました。


 横浜FCは,現在最下位に位置しているザスパ草津をホーム・三ツ沢に迎えたわけですが,ゲーム全体の印象から言うと,リズムは草津が握っている時間帯が多かったような感じがします。


 まずは,横浜FCの印象から。


 確かに,ディフェンシブな感じがしましたね。
 4バック・システムとは言え,SBはどちらか一方がある程度高い位置を取り,もう一方が守備ブロックと連携しながら相手攻撃陣を抑え込むという“3.5バック”的なシステム運用が多いような気がします。
 しかし横浜FCは,4人が最終ラインに収まっている時間帯がかなり多かったような感じがします。しかも,4人で構成される守備ブロックがセンターに絞り込んでいるような形で。中盤が大きくアウトサイドに開いているということも影響しているのでしょうけれど,アウトサイドからの攻撃が仕掛けにくいのではないか,という感じがしました。
 守備面でのさらなる安定を意識するのであれば,相手アウトサイドをいかに抑え込みながら,攻撃面での起点を提供するかという視点からアウトサイドのポジショニングを考えるという部分が求められていくのかな,という感じがしました。
 また,ボール奪取位置が高いときには攻撃面でのリズムが生まれているように受け取りましたが,ロングボールへの対処など,トランジションの位置が自陣低い位置に下がってしまうと,ビルドアップがなかなかスムーズにいかないという感じもしました。さらに上を狙い得る位置に付けている以上は,もっとクオリティの高いフットボールが展開できるはずだし,その可能性はあるのではないか。高木監督をはじめとするコーチング・スタッフの手腕の見せどころであるように感じました。


 次に草津の印象を。


 大ざっぱに言えば,ゲームを支配している時間帯は多かったようにも感じます。ただ,フィニッシュに持ち込む際の「粗さ」が目立つ。また,フィニッシュの形が「単発的」なのが気になりました。例えばリフレクションが狙えるようであれば,攻撃面での可能性が広がるような感じがします。その意味で,ラッシュを掛けるべき時間帯で後方からの効果的なプッシュ・アップが見られるようになるといいな,と。
 アウトサイドに関しては,相手がかなり低い位置にいたことも作用していますが,かなり効果的だったような気がします。また,中盤とのポジション・チェンジの中から相手守備ブロックを崩しにかかる場面も作り出せていました。


 ただ,「組織的」ではないというのが最大の問題点なのかな,と。良い攻撃を仕掛けられる時間帯もあるのだけれど,基本的には“キック・アンド・ラッシュ”という印象が強い。本来増幅させるべきイメージは,むしろダイレクト・プレーで相手を崩した形に求められるように思います。現状,プレーしているプレイヤーの間でブレを生じているかのような戦術的イメージをしっかりと整理し,守備面において個を意識したものからコレクティブな方向へと交通整理してやることで,状況を打開するきっかけが見えてくるのではないか,と感じました。


 ・・・そういった部分を含めて言えば,最初に書いたことは今節の印象を書いたものでもあるわけです。


 横浜FC草津のミスを的確に突いていたように思います。
 ファウルと判定された「幻の先制点」にせよ,先制点にして決勝点となったアウグストのゴールにせよ,その起点は草津守備ブロックのちょっとしたミスだったように思います。


 逆に,草津はミスを広げてしまいがちなところがある。時間的な問題もありますからなかなか難しいのでしょうけれど,この部分を修正するだけでも何かのきっかけはつかめるのではないか。今節は「カップ戦」のような印象を強く残していたように思いますが,それだけに「勝負強さ」という要素の一端が見えたゲームだったと思います。