実戦的語学のススメ。

杉山センセのコラム(gooスポーツ - NumberWeb)を読んでいて,最初にパリに足を踏み入れたときのことを思い出しました。


 ロンドンからパリ,となれば,鉄道に造詣の深いひとならば間違いなくロンドン・ウォータールーから“ユーロスター”を使ってパリ北駅へ直行,というコースを採ると思います。思いますが,ロンドンで借りていたフラットは,パディントンから歩いて帰れる距離にありました。当然,ウォータールーに移動するよりもパディントンに出る方が圧倒的に近いために,ヒコーキというパターンを選択したのでした。


 フランス語の洗礼を受けるのは,CDGに降り立ってすぐでありました。


 当初は電車での移動を念頭に置いていたのですが,よく考えてみると電車はパリ北駅に乗り入れるはず。だけど,私が事前に予約しておいたホテルはオペラ・ガルニエからほど近く,メトロの駅で言えば“Quatre Septembre”駅(確か,旧名称だと“Rue Montmartre”だったはずです。)の近くでしたから,できることならばオペラ・ガルニエに直行できる方法を使いたいな,と思っていたわけです。


 というようなことを考えながらコンコースを歩いていると,パリ交通局のカウンターが見えてきます。


 どうせならばトラベルカード(無記名式の定期券,と言いますか,期間が長めのフリーパスと言いますか。)のようなものを手に入れてしまえばあとが楽だし,と思いながら交渉開始です。フランス語と英語が微妙に入り交じった意味不明な(というか,傍目にはかなりヘンな)会話をしながら何とかトラベルカードを手にし,オペラ・ガルニエに向かうバスに乗り込んだわけです。


 さすがに,これではブロークンな会話すら成立しないし,英語を強引に押し切るというのもあまりに芸がない。そこで考えた手が,「ブラッセリーで耳学問を実践する」ことでありました。予想外に取れたお休み,そのお休みを利用したひとり旅でしたから,上品にカフェでゴハンをいただくなんていうのは最初から計画外でありました(いまにしてみれば,もったいない話ですけど)。そこで,ブラッセリーでちょっとしたビールのアテをオーダーしつつ,ノンビリとフランス・ビールを楽しみながらどういう会話をしているのか,チェックしてみようと思ったわけです。


 結果は大成功でした。


 ちょっとしたあいさつにはじまり,オーダーのときのフレーズとか,いろいろなフレーズを身をもって体験することができたわけです。しかも,そのときはちょうどパリ・サンジェルマンのゲームが店内のTVから流れていて,バーマンのひととフットボールの話でひとしきり盛り上がったりしました。


 海外旅行に出掛けたりすると,「通じなかったらどうしよう・・・」などと不安に駆られるかも知れません。ですけど,パーフェクトであることを意識しないようにすると,案外まわりに「先生」がいることに気が付くはずです。ひとの会話に耳をそばだてるわけですから,確かに上品なやり方ではありません。ですが,こどもさんが言葉を覚えていく過程を考えてみれば,「オウム返し」がかなり有効であることもまた確かであるように思うのです。それに,オウム返しをしているうちに,いつの間にかそのフレーズは体に残っていきます。


 しゃべるためのヒントはそこら中に落ちています。そのヒントを上手に拾い出すと,滞在最終日にはちょっとしたフレーズは頭の中に残っているはずです。外国語と言っても,決して高い壁が待ち構えているわけではありません。こういう部分を含めて楽しめるようになると,旅の楽しみは一気に広がるように思います。