対横浜戦(06−GL#6)。

ボール・ホルダーに対して素早くプレッシングを仕掛け,早い段階で数的優位を構築しながら攻撃リズムを寸断する一方で,攻撃の起点を構築する。横浜が徹底してきているだろう組織的なファースト・ディフェンスへの対抗手段として,“パス・スピード”を引き上げることを徹底してきたのではないか。


 「縦」へのスピードを最大限に活かすためには,パスを受けてから再び加速態勢に入る必要がある足下へのパスを狙うよりも,パス・レシーバーの前に広がるスペースを強く意識したパスを繰り出すことが重要な要素となる。ただ,そのためにはボール・ホルダーとパス・レシーバーがしっかりとスペースに対するイメージを持っていることと,パス・レシーバーがスピードに乗った状態でボールを収めることができるようにオフ・ザ・ボールでの鋭い動き出しを繰り返していく必要がある。今節では,パス・レシーバーが積極的にパスを呼び込む動きをする中からダイレクトに近い形でのパス・ワークが成立していたように感じる。
 ディフェンシブ・ハーフがサイドチェンジを仕掛ける前に,一度相手の視界からボールを隠す動きが今節に関してはあまり見られず,早いタイミングでボールが動いていたのは,相手がかなり高い位置からでも積極的にプレッシングを仕掛けてきたという部分もあるだろうが,それ以上にパス・レシーバーの動き出しが早く,スペースを強く意識しながらパスを繰り出すことが可能であった,という部分が大きかったように思う。


 また,「縦」という部分に関して言えば,最終ラインからの積極的なドリブル突破という部分でアウトサイドとの連携が取れていたように感じる。


 アウトサイドが積極的な上下動を繰り返していたことに加えて,1トップへの対応でセンターに絞り込む時間帯が多かったためか,相手SBは低い位置での防御に意識を集中せざるを得ない部分があったように思う。それだけに,アウトサイド,そして時間帯によってはストッパーが積極的に攻め上がることで,相手守備ブロックのマークを混乱させることに成功していたように思う。
 前線が「規格外」とも表現すべき破壊力を持っているために,相手守備ブロックはどうしても1トップを抑え込むことに意識が傾く。恐らく,相手は最終ラインが1トップに対して常に数的優位を維持し,同時にアウトサイドを抑え込むべく4バック・システムを採用してきたのだろうと思う。その守備ブロックのバランスが大きく崩れ,センターとアウトサイドの間にクラック(スペース)が生じる。その部分を有効に使うという意識がアウトサイド,そしてシャドー・ストライカーとの間でしっかりと共有されていたことが今節における大きなファクタとなった。


 しかし,さらなる課題としては1トップにボールが収まったときのオフ・ザ・ボール・モーションになるのではないか。


 非常に決定力の高いFWなのは確かだが,それだけにボールに対して複数のDFがプレッシングを仕掛けてくることが考えられる。そのときに,アウトサイドやシャドー・ストライカーがどうボールを呼び込むか。守備面での戦術的なバインドはかなり浸透しているように感じられるが,攻撃面に関しても必要最低限の戦術的なバインドをかける余地があるように思う。


 いつも通りの,1日遅れであります。


 どういうスターター・ラインアップが組まれようとも,「浦和」というチームが持っているストロング・ポイントがしっかりとピッチに表現されるようになってきている。そんな実感を持つことができたのが,今回のゲームではなかったかな,と。


 “ボール・ポゼッション”をチーム・コンセプトの中心に据えているとしても,スピードという部分はやはり浦和の魅力を作り出すものだと思うし,パス・ワークとドリブル突破がバランス良く織り合わされることで,相手守備ブロックを縦方向に引き出し,あるいは横方向に引き出すことでフィニッシュにつながるクラックをつくり出すことができるように感じます。
 そのときに,どちらかと言えば足下への「ピンポイント」に近いパス・ワークが比較的強く意識されていたようにも感じます。相手が自陣低い位置に最終ラインを構え,中盤でのプレッシャーをあまり重視していなかったからか,ボール・ホルダーがある程度の余裕を持ってパスを繰り出すことができていたということとも深く関わっているようにも思えます。ただ,今節の横浜のようにボール・ホルダーへの徹底したファースト・ディフェンスを仕掛けるチームに対しては,ボール離れを徹底して早めないとターン・オーヴァのポイントを提供してしまうことにもなりかねない。そういう部分への対策だったのでしょう,ダイレクトでのパス・ワークとボールを呼び込む動きとがバランス良くリンクしていたように思います。


 もちろん,戦術交代を経て守備バランスが若干崩れ,最終ラインにかかる負担が前半に比較して高まってしまったこと(そして,失点につながるファクタになってしまったこと)はカップ戦準々決勝,そしてリーグ戦に向けて修正していかなければならない課題だろうと思います。戦術交代があったとしても,チームとしてどういうファースト・ディフェンスを仕掛けていくかという部分でブレがあってはならない。どういう形でゲームをクローズに持ち込むかという段階で必要以上にバタつくことがあると,掌握しているはずの主導権を相手に譲り渡すことになり,ネガティブなイメージを残したままにタイムアップを迎えてしまうことになる。ここに関しては,しっかりと修正していくところでしょう。
 ですが,今節に関してはそれ以上にスペースを強く意識したパス・ワークとスピードとのバランスが良くなってきていることが収穫と言って良いゲームだったように思います。