ルーキー・ゴーリー。

あと50〜45分でキックオフ・タイムを迎えようかという時間帯。


 フィールド・プレイヤーに先立って,ゴーリーがウォーミング・アップのためにピッチへと駆け上がってくる。そのときまで,(そう言ってしまっては失礼であることは承知しているけれど)土田GKコーチとキャッチング練習を開始するときまでは“サプライズ”が用意されているとは思いませんでした。


 確か,プラクティス・ショーツに背番号がマークされているかと思うのですが,“28”という表記のフットボーラーがスターター・ラインアップに入っていることを示すウォーミング・アップ・ルーティンだったので,正直ビックリしたわけです。
 確かに予選リーグ突破をすでに決めてはいたけれど,予選順位1位でグループリーグを突破すること(勝ち点3を確実に奪取すること)を目標に据えていただろう横浜戦において,ルーキーである加藤順大選手を起用したということは,指揮官の加藤選手に対する大きな期待感の表れだろうと感じます。練習中にコーチをハーフウェイ・ライン近くに立たせてパントキックの練習をしているときには,ピンポイントでコーチの足下,あるいは頭上をかすめると言うよりも,あまり弾道の高くない,ドライブのかかったようなボールを蹴るな,と感じていました。


 実際にゲームがはじまると,かなりモチベーションが高かった裏返しなのか,“Shot on Goal”とは言いがたいシュートであってもかなり積極的にセービング,あるいはフィスティングの体制に入っているのを見て,「高いモチベーションが空回りしなければ良いけれど」と思うところもありました。
 ですが,練習中に感じたドライブのかかったようなフィードはゲームに入ってもしっかりと機能していたし,彼にとっての大きな武器になってくれるのではないか,と感じました。総じて安定したプレーを見せてくれていたように思います。


 守備ブロックも加藤選手が余裕を持ってプレーできるように,徹底した守備応対を続けていたように思います。パス・コースをしっかりと絞り込めているために,振り回される形でセービングに入るという局面がほとんどなかったように思います。


 まあ,失点場面に関しては「良い経験」だろうと。


 横浜がセットプレーから「何か」を仕掛けてくることはこれでつかめたはずです。また,横浜に限らずセットプレーを大きな武器としているチームは,ゴーリーが隙を見せてしまうとその隙をしっかりと突いてくる。そういうことを実戦という舞台で体験できた,という意味で「授業料」とでも考えておけばいいのではないでしょうか。


 ともかく。


 高い潜在能力を持ち,発展性を秘めたルーキーが実戦を経験したということはうれしい話だな,と思うのです。加藤選手にとっても大きな自信と課題を手にしたでしょうし,チームにとっても競争がさらに活性化されるという部分でメリットが出てくる。もちろん,コーチング・スタッフにとってはうれしい「頭痛のタネ」が増えるということを意味するのでしょうけれどね。