La finale a Paris.

・・・アクサンテギューがないとか突っ込まないように。


 ヨーロッパ・チャンピオンズリーグ(欧州カップ戦)決勝であります。


 イングランドでは最も安定した成績を収めてきている名門ではあるけれど,意外なことに今回が初の決勝進出となるアーセナルと,かのヨハン・クライフがチームを率いていた1991〜92シーズンにビッグイヤーを獲得して以来,2度目の決勝進出となるバルセロナが,スタッド・ドゥ・フランスで対戦する。


 この2つのクラブの戦いぶりをイメージしてみると,ある程度対照をなしていると言って良いような気がします。ガンナーズは確かに攻撃的な部分での魅力を強めてきてはいますが,伝統的に守備を強く意識させるクラブでしたし,そのイメージはいまでもしっかりと残っているように思います。攻撃的な部分では,やはりバルサが印象的でしょう。カップ戦ならば,どこか現実的に“1−0”を狙う組織戦術へと微妙にアジャストしてくるはずですが,昨季の欧州カップ戦などでもハッキリしていましたが,決して守備的にゲームを進めることはしない。“3−2”を好む,という典型的なダッチ・スタイルを押し切ることを選択しているように感じます。


 さて,決勝戦ですが。


 もちろん,互いが持っているフットボール・スタイルが真正面からぶつかり合うリーグ戦とは違って,どこかにリスク・マネージメントを意識したゲーム運び,という部分があるように感じますが,前半20分を目前とした時間帯での「非常事態」によって,特にガンナーズはリスク・マネージメントを前面に押し出した現実主義的な戦略に転換したように思います。37分,セットプレーからの先制点奪取によって,その戦略はより明確なものとなっていく。それ以降の守備応対は,クラブが歩んできた歴史を感じさせるものだったように思います。対するバルサは徹底してプレッシャーを強めることで,ガンナーズの守備ブロックに破綻を作り出そうとする。そんな意図がハッキリと見えていたように思います。後半に入っての戦術交代はピッチ上の選手に対する,指揮官の明確なメッセージとなっていたように思うし,ゲームの流れを引き寄せる大きな要素となったように思います。


 確かに,カップ戦らしさが支配していた部分もあるようには思うけれど,そんなカップ戦らしさと並んでクラブが持っている個性のようなものが表現された,なかなかの決勝戦だったのではないか,と感じます。


 ・・・いつものバイアスかかりまくりの,イングランドびいきらしからぬ第三者的な目線でありますが,ちょっと訳ありまして。その点につきましては畳んであるところで書いていきたいなと。


 ここからはちょっとしたホンネでありますが。


 正直なことを言えば,ロンドンに本拠を置くクラブならば,ガンナーズにライバル視されることのなかったノース・ロンドンダービーの相手の方に共感しているので,ビッグイヤーを奪取するというのには複雑な感情があったにはありました。実際問題,スパーズは想定外の集団食中毒に巻き込まれたおかげで,ウェストハム・ユナイテッドとのアウェイ・マッチを落としてしまい,死守したかったリーグ4位というポジションから陥落してしまう。さらに悪いことに,FAに対する再試合の要求も受け入れられずに終わる。そんな状況でカップを獲られた日にはまるで立つ瀬なし,とちょっと同情的な見方も自分の中にあったりするわけです。


 おまけに言えば,フットボール・スタイルを見ればやっぱり“・・・(適語補充のこと)”という形容詞の付いてしまうアーセナルよりもバルサの方が魅力的。アウトサイダーとしては,あまり本気でガンナーズに感情移入できないところがあったりするわけです。イングランドびいきであるにもかかわらず。


 ですが,さらにヨコシマなことを考えたうえで,一時はガンナーズカップを獲ってほしいと思っていたことも確かです。


 簡単に言ってしまえば,現指揮官にある程度の「達成感」を持ってほしかったわけです。アシュバートン・グローブへと本拠地を移転し,財政的な基盤を整備することに成功することで,クラブの歴史に間違いなくアーセンに関するチャプターは用意される。そのチャプターをビッグイヤー獲得,というトピックで締めくくってくれたならば,“新たなチャレンジ”というささやきが有効なものとなるのではないか。


 ・・・言ってしまえば,アーセンを次期代表監督に,とどこかでやはり考えているわけです。現指揮官が見事に積み残している「将来性あるタレントの発掘と既存のタレントとの融合」という部分をしっかりとしてくれるのではないか,という期待があるわけです。もちろん,各年代別代表を率いるコーチング・スタッフと連携して,“チーム”として若手をしっかりと育成し,トップクラスへと送り出すという強い意思があることが前提条件となりますけれど,その体制を統率するスキッパーとして最適任かな,と感じるのです。そのためにも,ある程度の達成感を得てもらいたかったわけですが。


 ・・・実際には,リベンジに燃えそうな結末ですよね。まあ,うまくはいかないですな。