祝福されない栄冠の理由。

オープントップのダブル・デッカーに,チームとチャンピオンズ・カップ


 そんな,ヨーロッパならばごく当然の優勝パレードの風景が今季に関しては見られない。それだけでも充分にショックな出来事ですが,カラビニエーリ(国家憲兵)による捜査次第ではそれどころではない結論が待っているかも知れない。何とも言えない部分があります。


 ということで,今回はこちらの記事(日刊スポーツ)をもとに書いていこうかと思います。


 今回問題となっているのは,GMであるルチアーノ・モッジが関わったとされる不正であります。2004〜05シーズンに行われた19ゲームにおいてイタリア・サッカー協会(FIGC)に対して,ユーヴェに対して有利なジャッジをするようにプレッシャーを掛けたり,主審のノミネートに関して要望を押しつけるような行為があったのだとか。


 酒巻さんのコラム(gooスポーツ - NumberWeb)を読むと,2004年8月から2ヶ月間にわたって,モッジGMとFIGCサイドとの通話内容が記録されているようでありますから,恐らく捜査の端緒は内部告発,あるいはそれに限りなく近いものであることが想像できます。また,時期的なことを考えれば長期にわたる内偵をすでに行っているはずです。カラビニエーリ(国家憲兵)が本格的に関係各所に対する家宅捜索や事情聴取をこの時期になって行ったというのは,立件の可能性がかなり高いということを意味しているのではないかと感じます。


 AFP=時事通信の記事(gooニュース)を見ますと,捜査対象はユーヴェのみならず,ACミランフィオレンティーナラツィオにまで及ぶ,相当広範囲なもののようです。ただ,この記事を書いただろうAFPの記者さんによれば,ミランヴィオラの関係者は疑惑を真っ向から否定するコメントをリリースする一方で,ユーヴェ・サイドはこの疑惑に関するコメントを拒否していると言いますし,ちょっと前の報道ではユーヴェのフロントが総辞職ということも報じられていたように記憶しています。いまにして思えば,疑惑が表面化する前に事態をできるだけ小さくしておきたいという意図が働いたのかな,と。


 ・・・素朴に思うことですが,名門のプライドと不正行為を働く動機とが単純にトレード・オフの関係に立つとは思えないのです。国内主要タイトルで見れば,スクデット獲得回数が今季の分を加算すれば29回,コパ・イタリアを9回制している。欧州カップ戦を考えると,ビッグイヤーを掲げること2回,カップ・ウィナーズ・カップを1回。そして,UEFAカップを3回奪取している名門であります。“グランデ・トリノ”と呼ばれる黄金時代を経験している,同じトリノに本拠を持つライバルに大きく差を付けている。それ以上に,アーセナルのように最も安定した成績を収め続けたクラブ,という評価をすべきクラブでしょう。


 その輝かしい歴史に,動機はどうあれ泥を塗ることとなった。


 ボスマン判決以降,フットボール・ビジネスは確かに拡大し続けていますし,欧州カップ戦でしっかりとした成績を収め続けることで,クラブ財政は確かに安定していく。ちょっと考えるとどこかが決定的にヘンな気がするのですが,「おカネのために戦力を補強し続ける」ことがトップ・クラブには求められてきたと言っても良いでしょう。本来,クラブ財政を支えるのはチケット収入であったりスポンサー・マネーであり,そのための営業努力が一般の事業会社と同じように求められるはずです。充実した戦力に代表されるクラブの強さはそういう基礎構造があってのことでしょう。ですが,ユーヴェのフロントはどこかをバイパスしようとしたのではないか。


 イタリアン・フットボールが健全性を取り戻し,大きく失われてしまった信頼を回復するためには,名門と言えども例外を許すべきではない。事情を知る立場にはないだろうコーチング・スタッフや選手たちのことを思うと,降格という事態は受け入れたくはないけれど,「結果責任」が問われる事態にまで立ち至れば,やむを得ないことのように感じます。