時期に遅れたテストとセッティング。

ゲームを前に,「絶対に勝利を収める」ということを徹底したのだとか。


 確かに「国際Aマッチ」であることには違いないわけですから,負けて良いなどとは思いません。ですが,時期的なことを考えれば「眼前のゲームに勝利を収めること」などよりもはるかに重要なタスクを課すべきだったのではないでしょうか。


 その意味で,代表戦としての意味をあまり感じることのできないゲームが続いてしまったな,と感じます。


 以前も書いたかと思いますが,隠れたタレントを発掘するべき時期はすでに過ぎていると思っています。


いまの指揮官は「セレクター」であるとコメントしていたように記憶していますが,ならば柔軟にリーグ戦で活躍しているタレントをテストすべきだったと思うし,キリン・チャレンジに代表される“インターナショナル・フレンドリー”はテストのために絶好の舞台だったはずです。
 その舞台をいままで有効に使うでもなく,「序列」を強烈に感じさせる選手起用を続けてきた。また,チームの根幹に大きく関わってくる「3か4か」という部分でも原理原則論を感じるわけではなく,むしろ実際にピッチに立つ選手たちが自然に化学反応を起こすのを待っている,という感じが強かった。


 にもかかわらず,今回のキリン・チャレンジが選手選考に大きな影響を及ぼすかのような伝え方がされている。さも重要なテストが行われているかのように。強烈な違和感を持たざるを得ないわけです。


 そうではなく,いまこそメンバーをある程度固定しながら「セッティング」を出していかなければならない時期だろうと思っています。国際Aマッチデーではありませんから,フルメンバーでの本格的なセッティングを出せるわけではない。それでも,フルメンバーを具体的にイメージしたうえでの基本的なセットは現段階で出しておく必要があるはずだし,できるはずだとも思っています。そんな時期だと思うのですが,そういう意図はあまり感じられなかった。


 ゲーム自体はスコットランドが引き気味に位置していたからか,ボールを積極的に走らせることには成功していたように思いますが,ポジションを積極的に崩す,あるいはスペースを意識したパスワークと言うよりも,足下を狙ったボールがかなり多かったためか,スコットランドの守備ブロックに具体的な脅威を与えるまでには至らなかったように感じます。
 そんな違和感,はっきり言ってしまえば不愉快さを持ちながら見ていたのですが,“ボーダーライン”にあるとされる選手たちはピッチ上で最大限の自己表現をしていたように思います。彼らの活躍はある種の清涼剤のように機能してくれていた。ただ,ピッチで自らを表現する機会すら与えられなかった選手もいますから(誰のことかお分かりかとは思いますが),不愉快さが完全に消えるわけではありませんけどね。


 この時期に,ここまでネガティブなことを書くのは本意ではないけれど,あまり楽観できる状況でもないことだけは確かのようにも感じます。


 とは言え,実際に戦う選手に対する意識はまったく別です。


 実際にアクレディテーションを手にする選手たちには心から頑張ってほしいと思うし,ポテンシャルを持ちながら選ばれることのなかった選手,ケガのためにチャンスを生かすことのできなかった選手をはじめ,リーグ戦に参加しているすべての選手の権威を背負っているという意識で戦ってきてほしいと思っています。