監督人事、そのあとに。

失礼を承知ではっきり言えば。


 かりにこのひとがマクラーレンさんを差し置いてFAとの契約書にサインするようなことがあると,「歴史の針」は大きく巻き戻されてしまうことにもなるでしょうね。


 そもそも,フランク・ランパードデイビッド・ベッカム,あるいはショーン・ライト・フィリップスやキーラン・リチャードソン,そしてもちろんスティーブン・ジェラードという中盤にそろう才能をイメージすれば,どういうスタイルを指向すべきか見えてくるような感じがします。ダメを押すようなことを言えば,エリクソンさんがどうしてFAに呼ばれたのか,ということを考えれば,ロングレンジ・パスを「主戦兵器」として考えている(=フィジカル重視のチーム編成に自動的にならざるを得ない)かのような人物は,やはり「第2候補」以上に浮上する余地はない,と考えるのが妥当ではないでしょうか。


 というわけで,今回はちょっと短めにこちらの記事(サンスポ)をもとに書いていこうかと思います。


 ご当人はかなりのショックを受けられたようですが,純然たるアウトサイダーである私としては「それほどショックなことですかねェ。」と失礼なことを言ってしまいそうになります。


 ・・・お間違いのなきよう。「キック・アンド・ラッシュ」を全面的に否定しようなどとは思っておりません。局面を打開するきっかけとして有効に機能する時間帯も確かにありますし,上手に織り込むべき戦術だろうとは感じます。しかし,「主戦兵器」である必要もない,と思うのです。この部分で,サム・アラーダイスさんのアイディアは“キック・アンド・ラッシュ”を主戦兵器として捉える方向に傾いているように見えるわけです。


 対して,イングランド代表はすごくスローではあったけれど,伝統的な戦い方から変化しつつあったわけです。そもそもフットボールの母国でありながら,1966年の自国開催の大会以来カップを掲げる機会には恵まれていないし,一時はフットボール・スタイル自体が「時代遅れ」という評価を受けさえし,本大会出場ができない時期を過ごしもした。変化は必然だったのです。その流れの中で,エリクソンさんの就任も考えておく必要があるでしょう。


 その時系列に逆行する判断をするか?と考えれば,「第2候補」とは言われていたけれど,アラーダイスさんが契約書にサインできる可能性はちょっと低かったのだろうと思うのです。


 ・・・とまあ,こうは書きましたがね。


 「最高峰のお仕事」をできる可能性がありますよ,あなたも次期監督候補のリストに登載されてますと言われていながら,最終的なところで指名されなければ失望もするでありましょう。だけど,最終的に指名から外れた,などというときこそ毅然としていないと,「だから落ちるんだよ。」などと言われてしまうようにも思うのです。“Good Loser”であることは難しい,とは思うけれど,でもしっかりとしたリスタートをするため,そして再び「最高峰のお仕事」を目指すためにはどうしても必要なことだろうな,と思ったりします。