ONE MORE STEP.
正直なことを言ってしまうと,「あまりに印象の薄いクラブ」であり続けたように思います。
ここでは結構紹介している“CLUB COLOURS”という書籍ですが,刊行は1998年。その時点でのミドルスブラへの評価は,その書き出しに凝縮されていたように思います。
大ざっぱに意味をとってみますと。
「ティーサイドに本拠を置く主要クラブにして、大きなサポートを得られる潜在的な可能性を持ち、またよく管理されたグラウンドを持っているにもかかわらず、ミドルスブラは一貫してリーグ戦、カップ戦においてメジャー・タイトルを奪取することに失敗し続けてきた」
・・・まあ,さんざんな言われようなわけですが,そう言われても仕方ないような戦績でしかないわけです。クラブ創立は1876年。結構歴史を重ねているわけでありますが,なかなか安定した成績を出せずにいたクラブです。特に,1950年代後半から1970年代中盤まで,結構長期間にわたって下部リーグに落ちたまま浮上のきっかけをつかめずにいました。トップリーグがプレミアシップに移行した直後は上昇と下降を繰り返す“エレベータ”のような状態にも陥っていた。エディターさんの評価は決して間違ってはいなかったわけです。
ですが,変化の兆しは間違いなく訪れたわけでして。
かつてマンチェスター・ユナイテッドにおいてサー・アレックス・ファーガソンのアシスタントを担当していたスティーブ・マクラーレンがマネジャーとなって以来,この評価は少しずつではあるけれど変化してきているように思います。そのきっかけは,2003〜04シーズンにおけるカーリング・カップ(ヤマザキ・ナビスコカップに相当するリーグカップ)優勝あたりからでしょうか。思えば,彼が就任してから結構なシーズンが経過しています。ジワリジワリと結果が出始めているというのは,かつてのボスであるサー・アレックスとマンチェスターとの関係と(もちろんスケールの差はあるけれど)似ているのかな,と。
そんなクラブがいつの間にか(と言ってはあまりに失礼ですが)UEFAカップ決勝にまで駒を進めてきたわけです。タイトルに掲げたように,もう1ステップ上に踏み出すことができれば,クラブの歴史上初の欧州タイトルであります。というわけで,今回はいつも以上にイングランド勢に好意的なバイアスをかけつつUEFAカップのことを書いていこうかと思います。
UEFAカップ準決勝でミドルスブラが対戦したのは,ステアウア・ブカレスト。
ブカレストのホームで行われた第1戦では,30分にステアウアに得点を奪われるとそのままその1点を守りきられる形で敗戦を喫します。決勝進出のためには,積極的に攻勢をかけることが求められるわけですが,ホーム・リヴァーサイドで行われた第2戦の立ち上がりは積極的に攻勢をかけようとするボロの足下をすくうような展開となります。16分,24分と立て続けにステアウアに得点を奪われ,この時点での1,2戦合計スコアは3−0。ここまでだけを見れば,ステアウア・ブカレストが決勝へと駒を進めるのではないかと感じるところです。
しかし,ボロはここから猛烈な反撃に入っていくわけです。前半26分にサウスゲートに代わって投入されたマッカローネが33分にゴールネットを揺らし1−2で前半を折り返すと,後半はゲームのペースを掌握していきます。64分にはマーク・ヴィドゥカがゴールを奪うと,73分には1,2戦合計スコアを3−3のイーヴンに引き戻すリゴットのゴール。そして,89分のマッカローネのヘディングから生まれた決勝点によってミドルスブラはファイナルへの切符を手にすることになるわけです。
もうひとつの準決勝はシャルケ04−FCセビリア戦であります。
第1戦はシャルケのホームであるアレナ・アウフシャルケで行われましたが,スコアレス・ドローで終わるだけでなくシャルケは退場者を出すなど,あまり良い展開とは言えない状態だったようです。セビリアのホームに舞台を移した第2戦にあっても均衡状態は崩れず,レギュラー・タイムでは“0−0”のままに終わります。延長戦に突入し,101分のプエルタのゴールが決勝点となり,1,2戦合計1−0でFCセビリアが決勝へと駒を進めています。
・・・単純に準決勝の結果だけを見れば,ディフェンシブにゲームに入ってくるだろうFCセビリアに対してミドルスブラがどう攻撃を仕掛けていくか,という感じの決勝戦かなと思いますが,「一発勝負」ですからなかなか準決勝第2戦のようなスペクタクルはないだろうなと思います。
それはともかくも。欧州カップ戦(チャンピオンズ・リーグ)ではアーセナルが徹底的に守備的な姿勢を押し出すことでスタッド・ドゥ・フランスへの切符を奪取した一方で,ミドルスブラは3点のビハインドを猛烈な反撃によって跳ね返し,決勝進出を決めた。2005〜06シーズンはイングランド勢にとってちょっとした“ヴィンテージ・イヤー”のような感じかな,と思ったりします。