蹴球協会杯(準決勝)のことなど。

イースト・エンドのサポータたちは喜んでいると思いますね。


 本当ならば,ウェンブリー競技場でファイナルが戦われるはずだった2005〜06シーズン。私がかつてマグパイズ・サポータを見かけたように,ベーカー・ストリート駅近くのパブで重要な一戦を前に「燃料補給」中のハンマーズ・サポータが見られたはずなのですが。


 その代わり,ロンドン・パディントンからカーディフへ向かう姿が見られるのではないでしょうか。


 ということで,今回はひさびさの欧州カテゴリ,しかもイングランドびいきとしては抑えないわけにはいかない“FAカップ”のことなど。


 恐らく,フットボール・フリークの視点からすればもうひとつのセミ・ファイナルである“リヴァプールチェルシー戦”の方が興味深いだろうと思うのですが,私としてはもうひとつのセミ・ファイナルの方が気になっていました。


 以前もここでハンマーズのことは「狼煙。」というエントリを立てて,アラン・パーデュー監督のことを含めてFAカップでの躍進がプレミアシップにも好影響を与えるのではないか,という感じで書いていますし,ロン・グリーンウッド氏の逝去ということから「名将の訃報に触れて。」というエントリを上げてウェストハム・ユナイテッドの歴史にちょっと触れてもいます。興味のある方は読んでみてくださいませ。


 私が住んでいたエリアとは正反対に位置しているだけに,あまり身近な感じこそしなかったものの,サポータの熱狂度はノース・ロンドンに本拠を置く2つのクラブと同様,あるいはそれ以上のものを感じるクラブで,ちょっと気になる存在でありました。結構ハンマーズのことを書いているのは,どこかに共感できる部分をサポータやクラブに感じていたから,かも知れません。


 当時も典型的な中堅クラブ,という感じでした。


 ただ,ひょっとすればプレミアシップ上位に定着できる,そしてビッグクラブへの道ができるのではないかという雰囲気を同時に持ってもいました。けれど,実際にはプレミアシップ中位からうまく抜け出すことができず,下部リーグへの降格という事態にまで追い込まれてしまいます。それでも,チームの立て直しに早い段階で成功し今季はFAカップという伝統あるタイトルが現実的な射程に収まる位置にまでのぼってきた。そして,相手はかつてマンチェスター・ユナイテッドにおいてサー・アレックスの片腕を務め,イングランド代表を率いるだけの手腕を持っているという評価をされているスティーブ・マクラーレンがマネジャーを務めているミドルスブラ。大きくスコアが動くことはないだろうけれど,カップ戦らしい緊張感あるゲームになるだろう,と思っていたわけです。


 では,ヴィラ・パーク(アストン・ヴィラの本拠地)で行われたミドルスブラウェストハム・ユナイテッド戦をごく簡単に書いていきますと。マッチ・スタッツ(ESPNサッカーネット)を見ますと,ポゼッションをベースに攻勢をかけていたのがミドルスブラ,その攻撃を受け止めながら反撃の機会をうかがっていたのがウェストハム・ユナイテッドという基本構図が見えてくるかと。攻め立てていたボロにしてみれば,数少ない絶好機をしっかりと決めたハンマーズにしてやられた,という感じでしょう。


 ただ,カップ戦というのは圧倒的に攻め立てたチームが勝ち上がるわけではない,というのは言えるように思います。その最たる例が今季のFAカップ準決勝ではないか,と思います。しかも,もうひとつのゲームも似たような感じでありました。


 さて,オールド・トラフォードでのリヴァプールチェルシー戦でありますが。


 ベニューを見ると!ですよね。FAカップは準決勝となると中立地開催となるのですが,それでもコップの住人にとってはマージーサイドのライヴァル・クラブの本拠地で戦うというのは何か変な感じだろうな,と。


 それはさておき。同じくESPNサッカーネットさんからマッチ・スタッツを引っ張ってきますと,ボール・ポゼッションはやはり(と言ってしまうとナンですが)チェルシーが圧倒的優位,と言ってしまって良いような気がします。シュート数,コーナーキック獲得数を見てもリヴァプールチェルシーを上回ってはいないし,ゲームをコントロールしていたのはチェルシー,という評価は決して間違ったものではないと思います。


 しかしながら,同時にこういうことも言えるかな,と。


 リヴァプールカップ戦巧者ぶりは,ラファエル・ベニテスを指揮官に迎えても決して失われることはないし,しっかりと継承されている,と。昨季は欧州カップ戦で“イスタンブールの奇跡”と呼ばれる同点劇を演じ,PK戦でビッグ・イヤーを掲げることになる。また,前任指揮官であるジェラール・ウリエ時代には“カップ・トレブル”を達成したこともある。ウリエ時代には確かに“boring”という評価も受けたものの,勝負強さが強く要求されるカップ戦に適した戦い方をしてきたように思います。その流れが受け継がれているような感じがするわけです。


 一方では躍進を遂げたクラブが,もう一方では欧州,イングランドを含めて残されたタイトルに全力を傾けてくるだろうクラブがミレニアム・スタジアムに駒を進めてきた。どういうゲームになるにせよ,FAカップらしい雰囲気に包まれた決勝戦を楽しんでほしいと思っています。