対清水戦(06−09A)。

ゲーム全体を俯瞰してみれば,やはり4−4−2。


 しかもミッドフィールドを極力フラットに構成することで,プレー・エリアを徹底的に狭めるゲーム・プランを展開した清水の戦略に嵌ったという見方も成立するかのように感じる。


 しかし,今節においては戦術的な問題と並行して,ゲーム立ち上がりでの不安定さや心理的な隙を指摘するべきではないか,と感じる。相手に先制点を奪取された場面を考えると,クイック・リスタートに対する警戒不足,それに伴うボール・ホルダー,あるいはクイック・リスタートに鋭く反応しながら飛び出しをかけている選手に対する反応の遅れによって,マークがずれてしまっていることが大きな要因になっているように感じる。隙を突かれたことによる焦りがあったのか,ゲームを落ち着かせることをできない状態で追加点を奪われる。


 恐らく,明確なモチベーション・クラックは看取できなかったと思う。しかし,どこかで「後半勝負」という意識がチームを支配していたのではないか。


 相手がディフェンシブに来ることはほぼ想定済み。ならば,相手に対するダメージを与えることができれば前半のゲーム・プランとしては問題ない。確かに,ここ数節のゲームを見ればそういうゲームへのアプローチをしてきているものの,基本的には浦和は早い段階での先制点奪取が鍵を握るチームだと思う。先制点奪取によって,ゲームの主導権をできるだけ早く掌握する。相手を前掛かりにすることでさらなるスペースを作り出し,ミッドフィールドでの制圧力を高めていく。そういう形を作り出せずに,むしろ浦和のスタイルとは言いにくい後半勝負でゲームを決定付ける。そんな形が続いてしまったことで,どこかで浦和のスタイル,ストロング・ポイントが明確さを若干失ってしまったのではないか,と感じる。


 しかしながら,後半立ち上がりからの布陣には攻撃的なポテンシャルが浦和にはまだ十分に隠されていることが示されているように感じた。右アウトサイドとスイーパー,あるいはディフェンシブ・ハーフとの戦術交代。最初は指揮官の意図をつかみ切れなかったのだが,後半開始直後,その意図するところが理解できた。DFラインを統率するキー・プレイヤーをディフェンシブ・ハーフの位置に上げ,攻撃参加をよりスムーズにする。オフェンシブ・ハーフを右アウトサイドに戻し,アウトサイドからの攻撃をより活性化させていく。その後,攻守の鍵を握るリンクマンを交代させたことで全体のバランスが前掛かりになりはしたが,基本的に今節見せた攻撃面でのオプションは,まだ戦力的に完全に揃いきっていない状況にあっても,かなり大きなポテンシャルがまだ秘められていることを示したように思う。


 ・・・いつもの1日遅れどころか,2日も遅れたわけですが。


 この敗戦は間違いなく,チームにとってはポジティブなものとなる。と言いますか,いまのチームならば間違いなくこの敗戦を意味あるものとしてくれると考えています。


 単純に,後半に採用した攻撃オプションが一定の形を作り出しているというだけでなく,浦和が持っているストロング・ポイントを最大限に引き出すためにはどういう戦い方が求められるのか,あらためて認識するきっかけを与えてくれたように思うからです。相手がディフェンシブにゲームに入ってこようとも,早い段階での先制点奪取を強く意識しながらひととボールを早く動かす。ショートレンジ・パスを細かくつなぐだけでなく,ミドルレンジ・パスを巧みに織り込みながら相手ディフェンス・ラインを押し下げ,同時にクラックを作り出す。加えて,前線にボールが収まったときに周囲が積極的にサポートに入ることで攻撃に厚みを持たせる。書いてしまえばかなりベーシックなことに感じますが,そのベーシックなことに立ち戻るきっかけとなれば良い。そんな感じがします。