チームを束ねるものとは。

いつもお世話になっている“J's GOAL”さんのマッチ・プレビュー記事。


 基本的にはホームのクラブを追いかけているフリーランスのライターさんが執筆しているようですから,なかなか中立的な記事というわけにはいかず,行間のどこかでホームのクラブに対する好意的なバイアスが見え隠れしている。そんなことも含めてどういうゲームが行われるか(ということは,浦和以外に関してという部分が大きいわけですが),“フットボール・フリーク”として週末,あるいはミッドウィークのマッチデイを楽しむきっかけとして重宝させていただいております。


 普段だとなかなかスタジアムに足を運ぶチャンスに恵まれないディビジョン2に関するプレビュー,あるいはマッチ・レビューはホント,貴重なものだと思っているだけに,結構読んでいたりするわけであります。


 というわけで,いつものように何気なく読み始めた伊藤寿学さんのプレビュー記事(J's GOAL),かなりチーム・マネージメントの重要なところに関わることに触れているのではないか,と感じます。


 もうひとつ,“エル・ゴラッソ”紙に寄稿された野々村さんのコラムにも,同じような印象を持っています。そこで,この2つの参考書をもとに,ちょっとチーム・マネージメントを考えてみようかと思います。


 草津を追いかけている伊藤さんは,プレビュー記事を貫くテーマとして,「意識」という部分を取り上げています。


 対戦相手となる横浜FCがディビジョン2で2位という位置に付けている,その背景にあるものとして,クラブ,そしてチームが“ディビジョン1昇格”という明確な目標を共有し,その目標に向かって何をすべきかという部分でチームを構成する各選手の意識がまとまっていることを指摘しているわけです。


 対して,ホーム・敷島に横浜FCを迎える草津では,「意識」という面で選手間に大きなバラツキがあることを指摘しています。チームとして目標とすべきものは,指揮官交代という事態に立ち至った今季のスタート時点で現指揮官から明確に提示されているはずです。ディビジョン1昇格という目標であれ,ディビジョン2で中位以上のポジションを狙う,という現実的な目標であれ,間違いなくクラブ,チームとして共有しておくべき目標があるはずです。その目標に向かって,チームを構成する選手がすべきことは何か。その方向性が選手間で大きくズレていることを指揮官は見抜き,しっかりとした修正をかけてきた(はっきり言えば「盛大にカミナリを落とした」)のだとか。


 もうひとつ。エル・ゴラッソ紙にコラムを寄稿されている野々村さんは,甲府のチーム・マネージメントを高く評価しています。明確なチーム・コンセプトを持っている指揮官は,甲府というチームが表現すべき「スタイル」をどんな相手に対しても押し出していくことを強く意識してディビジョン1参入初年度を戦うことを選択しているように思います。そのための強靱なメンタリティを選手たちには要求し,チームを束ねていく。その手腕を野々村さんは評価しています。


 ・・・これらのことから見えてくることは,「クラブとしてどういうスタイルを指向すべきか」という部分で明確なコンセプトを持っていないと,指揮官としても選手に対する明確な動機付けが難しい,ということではないでしょうか。


 横浜FCにせよ,ディビジョン1で言えばセレッソにせよサンフレッチェにせよ,クラブとしてどういう目標設定がなされていたのか,確かに不明確な部分があったように思います。横浜FCは,非常に早い段階での指揮官交代に踏み切ることで,クラブとしての目標を明確なものとすることに成功したように感じます。そして,その目標に向かって何をすべきかということがしっかりと選手間で共有されるようになってきた。


 恐らく,難しい言い方をすればこんな感じでしょうけれど,もっと単純化すれば「前節よりもさらに良いフットボールをピッチ上で展開することで,勝ち点3を奪取したい」という意識をどれだけ強く選手全員が共有できるか,ということでしょう。意識が同じ方向を向いていることで,チームがピッチ上で常に表現すべき戦術的なピクチャーがより明確なものとなっていくように思います。そのために全力でメンタル・マネージメントをしていかねばならないのが,コーチング・スタッフということになるのかな,と。やはり,本当に難しいハンドリングを強いられていく稼業なのだな,と思うと同時に,チャレンジングな仕事なのだろうな,と感じます。