対アラビアンガルフ戦(RWCアジア地区予選)。

不安要素を見つけることが困難なゲームだろう,と思っていました。


 また,ただ勝利を収めるだけでなく「相手を圧倒して」勝利することが求められるゲームだとも思っていました。


 今回は,ラグビー・ワールドカップ(RWC)アジア地区予選第1戦である,アラビアンガルフ戦のことを書いていこうかと思います。


 日本代表が入っているのは,アジア地区の最上位グループであるディビジョン1であります。このディビジョン1で1回戦総当たりのリーグ戦を行い,順位決定を行います。ここで3位になったチームが脱落,ディビジョン2で首位に立ったチームが新たに加わって最終予選を行います。1位チームが無条件でRWC本戦出場権を獲得,2位はオセアニアとのプレーオフに進出という形になります。今回は,地区予選(ディビジョン1)第1節,ということになります。


 失礼を承知で言えば,アジア地区予選で足踏みしている時期は過ぎているはずだと思っています。ジャパンが見据えなければならないのは,どう本戦でラグビー・ネイションに戦いを挑むか(そして,勝利へのアプローチをかけるのか),という部分にあるはずです。
 そのためにも,実力差を徹底的に見せ付けることで相手の戦意を完全に削いでしまう必要があるように思っていました。冒頭に書いたことの真意はここにあります。


 しかし,こちらの記事(サンケイスポーツ)にもあるように,ゲームへの入り方は最悪だったと言って良いように思います。あまりにスローな入り方は相手にダメージを与えるどころかある種の自信を芽生えさせ,本来ならば主導権を譲り渡してはならないゲームを必要以上に難しくしてしまう可能性が出てきます。その意味で,ジャン・ピエール・エリサルドさん(日本代表ヘッドコーチ)が言うように「技術ではなく,気持ちの問題」がゲームを左右しかねないと思うし,こういうゲームへの入り方は間違ってもしてはならないはずです。


 確かに,一定程度以上の実力差があるチームに対して「100%のパフォーマンスを発揮すること」を要求したとしても,なかなか難しいようにも感じます。ゲーム立ち上がりからフラットアウトしなくても,相手を突き放すことは恐らくできる。
 自分たちのプレーに自信を持つことは決して悪いことではないけれど,その自信が「過信」に傾くとゲームに対する大きなネガティブ・ファクタに変化してしまう。ちょっとしたモチベーション・クラックが,結果としてゲーム全体に悪影響を及ぼすことだって,実際にはあり得ることです。相手に掌握されたリズムを引き戻そうとすれば,相当なチカラが必要になる。本来不必要であるはずのチカラが,です。これがラグビー・ネイションズ相手のゲームだったら,リズムを引き戻せない危険性は相当に高い。


 ファイナル・スコアは圧勝と表現すべきものではありますが,クリアすべき課題も明確になったゲームだったように感じます。