対京都戦(06−08)。

4−4−2フラットへのひとつの解答。


 その解答が,アウトサイドを徹底的に利用しながらボールをワイドに展開し,相手守備ブロックを横方向に引き出すことでボックス中央での厚みを削ぐ,という部分に求められるのだとすれば,前半はその反対側に位置していたように思う。


 中盤でのボール・ポゼッションは確かに相手を圧倒していた部分がある。


 しかし,「縦」方向への飛び出しが少ないために相手守備ブロックを脅かすようなポゼッションとなり得ていなかったように思う。1トップにボールを預ける。その後に誰が1トップを追い越す動きをしながらボールを呼び込む動きをしていくのか。いわゆる2トップ・システムの“トップ下”のような動きに加えて,積極的に最終ラインの隙間を突くように前線に飛び出すことでボールを呼び込む,あるいはシュートのリフレクションを狙う。そんなシャドー・ストライカーに求められるもうひとつの要素が前半には影を潜めていたことで,「縦」方向への変化が乏しくなり,結果として相手は守備応対にある程度の余裕を持って当たれていたのではないか,という感じがする。
 アウトサイド,センターを含めて相手守備ブロックの周辺に存在するスペースを意識した仕掛け,あるいは守備組織にクラックを生み出していくような仕掛けが前半では少なく,ポゼッションが「怖さ」とは必ずしも直結していなかったような感じがある。


 対して後半は,前半とは別のゲームが展開されたかのような印象がある。


 中盤から最前線へと相手守備ブロックのギャップを鋭く突きながら侵入していく。
 あるいは,アウトサイドへとシンプルにボールを展開しながら相手ディフェンス・ラインの背後にあるスペースを狙うような動きをすることで守備バランスを崩そうというアプローチが明確に見えてくる。ボール・ホルダーが長くボールを保持しながらパス・レシーバを探す動きをする,またはレシーバの足下を狙うかのようなパスを繰り出すのではなく,ボールをホールドする時間を最小限に抑えながらスペースを意識した動きと連動したパス・ワークが成立するようになってくる。
 また,アウトサイドが戦術交代によって活性化したことも仕掛けイメージが明確な像を結ぶことに貢献したように思う。アウトサイドが時間帯によってベースライン近くまで深く侵入しながらボックスへマイナス方向のクロスを上げる,あるいはボックスを視野に捉えるかという位置からアーリークロスを上げるなど相手守備組織がつかまえにくいプレーを繰り返すことで,センターからの攻撃を活性化させはじめる。
 そして,右アウトサイドのイメージが左アウトサイドにもポジティブな影響を与えたのだろう,今節の全得点に左アウトサイドが良い形で絡めている。


 ポゼッションを基盤とするフットボールで相手を攻略する。


 しかし,大きくポジショニング・バランスを崩すことなく相手守備組織を破るのは難しいようにも思う。特に,プレー・スペースを最小限に抑え込むようなゲーム・プランを浦和相手にぶつけてくるチームは増えていくはず。狙う高みを攻略するためにも,そういうチームに対する対抗策を組織的な戦術として作り上げていく必要があるように感じる。


 前半45分は,確かに「仕掛け」という部分では課題を残していたように思います。


 先週水曜日のカップ戦では,しっかりとアウトサイドから守備ブロックを揺さぶるというピクチャーが描けていたように感じたのですが,今節では再びピクチャーにズレが生じてしまっているかのような印象がありました。
 組織戦術として,水曜日のカップ戦での仕掛けが整理できていないようにも感じます。


 ただ,相手にも相当なダメージを与えていたのかな,とちょっとホンネの部分では感じています。その意味で悪いながらも最低限のタスクは達成していたと見ることもできるかな,と。
 4−4−2フラットを採用し,できるだけ早い段階でボール・ホルダーへの数的優位を構築し,高い位置からのカウンター・アタックを指向する。そんなゲーム・プランだったように思いますが,浦和の守備ブロックの安定度は非常に高く,逆に今日とはその守備ブロックのバランスを積極的に崩すオプションを示せずにいたように思います。
 後半開始直後,相手は先取点奪取を具体的にイメージしてラッシュをかけたように感じますが,恐らく前半45分でのダメージがボディ・ブローのように効いてきていたのではないでしょうか。逆にプレー・エリアが広がる効果があったように思います。また,ハーフタイムでの修正は相当しっかりしていたのか,アウトサイドへの展開が多くなり,シンプルなボール回しが目立つようになってきました。
 後半45分間,ゲームの主導権を基本的に掌握したままで3得点を奪取できたひとつのファクタは確かにハーフタイムでの修正でもありましょうが,同時に前半のボール・ポゼッションも目立たないけれど相手にダメージを与える要素として機能したのかな,というところを感じます。


 ただ,意識して相手にダメージを与えるのと,攻撃が中途半端に終わってしまっているにもかかわらず結果として相手にダメージが加わっているというのでは大きく違うと思うし,極力早い段階で主導権を掌握するのが,浦和の今季の課題かなと個人的には思っています。
 なぜなら,ゲームを早い段階からコントロールできないと自分たちで不必要にゲームを難しくしてしまうことにもなりかねないように思うからです。


 現在の浦和を考えると,確かに中盤主体の攻撃を強く意識したくなるようにも思います。
 逆に,相手は中盤を徹底的にケアすることで攻撃を封じようとしてくるだろうことが予測できます。そういう相手への解答はカップ戦で提示できたはずなのだけれど,そのイメージを大きく展開できなかったのはちょっともったいなかった。
 カップ戦のイメージをもっと具体的に。駒場でのゲームをしっかりと戦術的なピクチャー(オートマチックに展開できる戦術)へと昇華させることで,攻撃オプションの厚みを増してほしい。そんな感じのするゲームでありました。