対福岡戦(06−GL#2)。

2004,2005シーズンを経て,正常進化形として今季目指すべき浦和のフットボール


 そのスタイルがどのようなものか。ともすれば予告編程度かも知れないし,あるいはダイジェスト程度かも知れないが,リザーブを多くスターター・ラインアップに加えている今節において“2006スペック”が示されたように思う。


 そして,“2006スペック”がより明確な形を持ったのは,後半45分間だったように感じる。


 アウトサイドが比較的高い位置を維持することで,相手のサイド攻撃を効果的に封じる一方で,ピッチを最大限に活用しながら攻撃を仕掛けていくことを可能にする。縦へのスピードとワイドにパスを展開することによって相手守備ブロックをアウトサイドに釣り出す。センターでのプレッシャーを相対的に弱めた状態で中央からの攻撃をより効果的に仕掛けていく。
 1トップとシャドー・ストライカー(トレクワトリスタ)が決してフラットになることなく,しっかりとアングルを持ったトライアングルを形成しながら攻撃を組み立てる。シャドーが広い視野を持ってボールをアウトサイドにまで展開させることで,縦へのスピードあふれる突破とポゼッションを背景とするパスワーク主体の攻撃とのバランスが明らかに好転しているように受け取れた。


 また,ディフェンシブ・ハーフの安定感がチームに攻守でのバランスをもたらしたように思う。
 今節の中盤,守備的な部分を受け持つポジションはレジスタという表現ではないように感じる。むしろ,リンクマンであったり,アンカーという表現が相応しいように思う。全体をコンパクトに保つためのリンクとして機能する一方で,守備面での安定をもたらすことで最終ラインからの積極的な攻撃参加を促す。また,時間帯によっては自らが高い位置へと進出することで相手守備ブロックを押し下げ,中盤でのプレー・スペースを作り出す。ポゼッションを基盤としながら攻撃を組み立てるスタイルと,高い位置からのプレッシングを背景とするハーフコート・カウンターを時間帯によって柔軟に使い分けながら主導権を掌握する時間帯を可能な限り多くしていく。“2006スペック”の設計図は概ねこのようなものなのではないか,と感じる。そして,その設計図に近い位置にまで来たのが今節ではなかったか,と思う。


 リーグ戦と同じく,1日遅れで書いております。カゼ薬の影響か,あまりクリアな頭では書いておりませんが。


 連戦による疲労蓄積を考慮して主力選手をスターター・ラインアップから一部外し,リザーブの選手をスターターとして使う。硬い表現をすればこんな感じでありますが,「戦術的なピクチャー」という側面では,リーグ戦以上にハッキリと見えていたような気がします。


 ディフェンシブ・ハーフが非常に安定感のあるコンビネーションだったということも,大きな意味を持つように思います。このポジションの安定感が,最終ラインからの積極的な攻撃参加を促す一方で中盤と最終ラインにともすれば生まれてしまうスペースを巧みに消し,ワンタッチ程度でのパス・ワークをリズミカルに交換しうる最適距離を保つことのできた要素かなと感じます。
 全体をコンパクトに維持し,アウトサイドが高い位置を保つ。シャドー・ストライカー(トレクワトリスタ)はボールをしっかりと散らすことで相手守備ブロックのマークをアウトサイドに引き出す。守備ブロックを横方向に引き出すことで,センターからの攻撃が破壊力を持ち得る。また,アウトサイドとセンターがスペースをより強く意識したパスを交換することで,相手守備ブロックのマーキングをずらすことができていく。
 そのためには,アウトサイドのポジショニング,センターの視野の広さも当然重要なファクタとなりますが,それ以上にリンクマンとしてのディフェンシブ・ハーフの役割が大きいように感じますし,チーム全体が守備意識を高めながら同時に積極的に攻撃を組み立てていくためにも彼らのパフォーマンスは大きな意味を持つように思います。


 リザーブ主体でチームを組み立てた,と表面的には言えますが,逆に戦術的な部分を見ると,“2006シーズン仕様”のチーム・スタイルにより近い位置にいるようにも感じます。
 確かに主力選手が持っている「個」のポテンシャルやパフォーマンスは相当な高みにあるように思いますが,それだけに“チーム戦術“というバインドが効果を発揮しにくい部分も出ているのかな,と感じるところがあります。彼らにとって,これ以上ない刺激が内側から加えられたことになります。今節の勝利はチームを本当の意味での“ポジティブ・スパイラル”に乗せるきっかけになりうるのではないか,と感じています。