Initialise.

どこか,レーシング・マシンのセッティングのように感じます。


 確かに,「好み」のセットというものもあるのだとか。であるとしても,「速く走るため」のセットが優先されるべきことは言うまでもありません。「速く走るため」のセットがコントロールしにくいもの,自分の好みから外れているものであるならば,自分がしっかりとライディングできるように必要最低限のリセッティングを施しながら折り合いを付けていく。本来のセッティングとは,そんな「微調整」と言うべき繊細な作業であるように感じるところがあります。


 そんな作業がうまくいかないことがあるとも言います。


 いつもと同じようなセッティング作業をしているにもかかわらず,タイムを出すことができない。本来ならば調整せずとも問題ない部分にまで,リセッティングの必要を感じるような状況にまで追い詰められる。セッティングをしながら,同時に迷路にはまり込んでいくような感じなのかも知れません。そんなときには,完全にすべての調整個所を「初期化」するのだとか。もともとマシンが持っているバランスを正確に把握し直し,出発点を明確なものとする。方向性を確認するために,原点へと戻っていくという考え方でしょうか。


 ・・・ちょっと屋号絡みの話を長く書いてみましたが。


 シンジ選手の置かれた状況もちょっと似ているように思えるのです。シンジ選手が浦和に,そして代表にとって大きな要素であることを疑う人間はそういないはず。むしろ,高い期待を背負っていると表現できるようにも思います。それだけに,イメージ通りのプレーができていないことに対する焦りのようなものがあるのかも知れません。本来ならば,トップフォームへと段階的に上げていくべき時期なのだろうけれど,”ワールドカップ”という存在がゆっくりとしたイメージとプレーとのシンクロを許さないという事情もある。その焦りが迷いを生んでいると言うか,悪循環を生んでいるような感じがありました。


 前節で足首を負傷したとのことでしたが,その症状はそう深刻なものではないようです。ただ,大事を取ってカップ戦,リーグ戦を欠場する方向性だとか。


 「災い転じて・・・」という格言ではないけれど,シンジ選手にとっては良いリフレッシュになるかも知れません。冒頭の表現を使えば,すべての調整個所を初期化して原点からセッティングを出し直すための良いタイミングと言えば言えるのかも知れないな,と感じるところです。