対名古屋戦(06−06)。

客観的な数字で言えばスコアレス・ドローであり,獲得した勝ち点は1。


 しかし実質的な部分を考えると,前後半で大きくその印象を変えるゲームであったように思う。


 前半45分間は,浦和がリズムを掌握していたように思う。
 立ち上がりから15分程度,全体が非常にコンパクトな中ミッドフィールドでボールが落ち着かない時間帯が続くものの,次第に主導権を引き寄せていく。立ち上がりの段階では中盤で積極的にボール奪取を仕掛けるものの,次第にボール奪取のポイントを自陣低めの位置に移行させていったかのように感じる相手に対して,積極的なパス交換から決定機を演出していく。とは言え,最終的なフィニッシュの部分で相手守備ブロックに抑え込まれ,あるいはミスによって先制点を奪うことなく前半45分間を終了してしまう。


 主導権はしっかりと掌握している。ただ,フィニッシュというポイントが欠けているだけ。そんな前半の印象が大きく変わっていくのが後半45分間だったように感じる。
 相手は立ち上がりから積極的なボールへのアプローチを見せはじめる。逆に浦和は,前半に決定機がありながら決めきれなかったことが心理的な影を落としているのか,チームからダイナミズムが削がれていったような部分があったように思う。前半はコンパクトさが維持されていたものの,後半になり全体が引き延ばされたような状況になり,中央を比較的強く意識した攻撃が跳ね返される局面が増えていく。
 前線,そしてトレクワトリスタに対するマークがより徹底されることでプレーに窮屈な印象が強くなっていく。そのために,中途半端な形で攻撃を途切れさせてしまう。加えて,リフレクションからのルーズボールを相手が保持し,カウンター・アタックを仕掛けるという形が多く作られていく。フィニッシュに向けた組み立てができない状態でのボール奪取を受けているために,相手のカウンター・アタックは威力を持っていたように思う。


 後半立ち上がりからの相手のラッシュを真正面から受け止めてしまい,中盤,前線が抑え込まれた状況を打開できず,リズムを取り戻すことができないままにタイムアップ。


 ゲーム全体をごく簡単にまとめれば,“ミス”がゲームを支配していたように思う。
 前半だけを取り出せば“勝ち点2を失った”という表現が相応しいように思う一方で,後半だけを考えると”勝ち点1を確保した”とも言えるように感じる。ただ少なくとも,こういうゲームをシーズン序盤に経験できたことは間違いなくチームにとって大きな収穫であろうし,今節,そしてナビスコカップ・グループリーグで提示された課題を克服することが,さらなる高みを目指すためには必要不可欠だろうと感じる。


 2004シーズンと2005シーズンでスタイルを変えてきた浦和ですが,その両方のエッセンスがやはり必要である,ということを再確認したゲームだったように感じます。


 「縦方向」へのスピードを決して失ってはならない。間違いないことです。


 しかし,攻撃のリズムを作り上げるべき選手たちにはしっかりとマーカーが張り付き,ボールを散らしたり守備ブロックの裏を突くようなプレーができるだけのスペースが与えられてはいないわけです。縦へと加速しようにも,そのきっかけをつぶされてしまう。そのときにどういうフォローができるか,という部分は2004,2005シーズンの応用問題のようにも思うわけです。
 2005シーズンでは,プレッシングを攻撃の起点として意識するのではなく,最終ラインとディフェンシブ・ハーフを含めた守備ブロックが攻撃の起点として意識され,中盤からの積極的なプレッシングはパス・コースの限定という意識付けであったように思います。その先にあるものが,しっかりとしたパス・ワークからのビルドアップであります。
 自陣から積極的なパス交換をするなかで相手を切り崩す。今節にも見られたものですが,その要素に「速さ」をエッセンスとして加えることで,マークを外したい。シンプルな部分から言えばアウトサイドにボールを大きく展開し,そこからアウトサイドのスピードを充分に活かす。同時に,レジスタ(ディフェンシブ・ハーフ)や最終ラインのプレイヤーが縦方向に突破を図り,マークを混乱させることで守備ブロックに綻びを作り出したい。


 浦和の基本的なスタイルとして「先制攻撃」が挙げられるものと思います。
 前半の早い時間帯で先制点を奪うことで,リズムを掌握するというものです。ただ,逆に言えば前半をスコアレスで折り返してしまうと自分たちでプレーを窮屈にしてしまうような部分もあるように思います。
 もともと浦和は,アウトサイドと中央がしっかりとリンクするトライデントの強さで攻撃を成立させているはずなのだけれど,そのトライデントが心理的な部分からか,中央偏重になっていってしまう。そんなときこそ,積極的にアウトサイドを使っていきたい。左アウトサイドは高くポジションを維持することができれば持ち味を大きく引き出すことができるし,ディフェンス能力の高い右アウトサイドにしても,攻撃的な意味は非常に大きい。中央での手詰まり感が強まっているのであれば,もっとピッチをワイドに使っても良いのではないか。ボールがピッチを大きく移動でき,チームとしての縦の速さがリンクするようになれば,今節提示された課題をクリアする端緒は早い段階で見つかるのではないか。そんな感じがします。