対FC東京戦(06−GL#1)。

まず,どういう形であるにせよ,先手が取れたことは大きな収穫だろうと思う。


 カップ戦にあっては,「先制点奪取」が大きな意味を持つ。


 特にアウェイ・ゴール制が今季から採用されているだけに,相手に先手を打たれるという事態は極力避けなければならない。そういう部分から見れば,立ち上がりから守備意識が攻撃面を上回るということは仕方ない部分があるように感じる。
 今節,相手はストリクト・マンマークを基盤に,マーカーを起点としてカウンター・アタックを仕掛けようというゲーム・プランを持っていたように思う。攻撃リズムを寸断すると同時に攻撃の起点をミッドフィールド低めの位置に設定し,カウンター・アタックからゲームの主導権を掌握し,あわよくば勝ち点を奪取することで予選リーグを有利に戦うことを意図する。カップ戦におけるある種のスタンダードを採用してきたようにも感じた。
 相手がストリクト・マンマークをベースとした守備的な戦術を徹底したことで,攻撃面でのリズムがなかなか構築できず,前半にあってはかなり膠着した印象を受けた。浦和としてのスタイルは各局面では感じられるものの,ミッドフィールドでリズムを作り出すべき選手が欠けているためかどこかでスムーズさを欠くような部分が感じられたように思う。具体的に言えば,マーカーの執拗なマークを素早いパス・ワークによってずらしていくのか,それともミドルレンジ〜ロングレンジ・パスを併用することでマーカーを積極的に揺さぶるのか,という部分でピッチ上の選手たちに共通したイメージが描き切れていないような感じがあった。


 ハーフタイムを挟み,そのイメージの微妙なズレが小さくなっていったように思う。


 前半よりも強くスペースを意識したプレーによって,相手守備ブロックをうまく引き出すことができはじめたように思う。90分プラスという時間枠のなかで修正すべき部分を修正し,結果を叩き出したということは予選リーグを有利に戦っていく上で大きな一歩になったと思う。


 “サッカーダイジェスト”誌(2006年4月11日号)にコラムを寄稿されている信藤健仁さんが面白い指摘をされていました。要旨だけを大ざっぱに抜き出せば,どういうコンセプトを持って,そしてどういうボール奪取イメージを持っているのかがまだ明確になっていないということを指摘されているわけです。
 この信藤さんの指摘が大きな意味を持つのは,今節のように大幅にスターターが入れ替わったときではないか,と感じます。


 というわけで,雑感程度に課題に関して触れてみますと。


 今節の対戦相手は,攻撃面で鍵を握るであろう選手に対してハッキリとマン・マークをつける戦術を徹底してきました。特に前半に関しては,前線へのボールの収まりが悪いことで攻撃にリズムが生まれにくかったように思います。そのときに,マーカーに対してどういう動き方をするのか,という部分が信藤さんの指摘につながるように感じます。


 まずは,どうマーカーの執拗なマークをずらすか,という部分があります。


 中盤が積極的にポジション・チェンジをかけながら,押し上げていく。同時に,アウトサイドにボールを散らしながら守備ブロックを横後方へ引き出し,そのギャップを攻め上がろうとするボランチ,あるいはDFが突く。そういう面での連動性は今節はなかなか難しい部分があったように思います。ボール奪取という側面で言えば,マーカーがボールを奪取した時点で積極的にプレッシングに入るのか,それともミッドフィールドはパス・コースを限定する程度にアプローチをかけ,最終ラインを含めた守備ブロックが攻撃を受け止めてからビルドアップを図るのか。この点に関して,あらためて戦術イメージの確認が求められるのではないかと思います。


 確かに意思疎通面での問題は大きいものと感じます。スターター・ラインアップが大きく変わっていますから,今までのリーグ戦と同じような評価はできないとも感じます。ただ,信藤さんが指摘する問題は,チームとして間違いなく共有しておかなければならない“戻るべき場所”のようなものですから,メンバーが入れ替わったとしてもある程度は感じられなければならないものでしょう。
 恐らく,今季はストリクト・マンマーク対策が「さらなる高み」を目指すためには大きな課題になるでしょう。このことも合わせて考えると,今節のゲームはチームにとっての良いレッスンだったのではないかと個人的には感じています。