対C大阪戦(06−04)。

“ポジショニング・バランス”。


 流動性を強く意識しているチームではそれほどの意味を持たないようにも感じるが,実際にはスムーズなポジション・チェンジを引き出すための大きな鍵を握っているのではないか,と思う。


 後半開始直前のフォーメーション。


 キック・オフを待っているときのフォーメーションとは微妙な違いを感じ,それだけにチームの動きがさらにスムーズになったような印象を受けた。3−6−1(3−4−2−1)から限りなく3−5−2に近いスタイルへ。具体的には,1トップ2シャドーからポンテをトップにより近い位置でプレーする形へと修正をかけ,同時にシャドー・ストライカーが必要以上にアウトサイドに展開しすぎないようなプレー・イメージを与えてきたのではないか,と感じる。


 前半に関して見れば,左アウトサイドは有効に機能したものの右アウトサイドからの仕掛けという部分はあまり多くは見られなかったように思う。守備意識を高めながら左アウトサイドとのバランスを取る,という意図もあったように感じるが,シャドー・ストライカーがかなりアウトサイドへと張り出していた時間帯が多かったように感じる。そのために,ともすればサイドにプレイヤーが重複してしまうことで縦方向への突破がノッキングを起こす可能性もあったように感じる。
 また,シンプルにボールを展開することで攻撃を組み立てると言うよりも,高い個人能力を背景とした突破を強く意識させられる45分間ではなかったかと思う。
 対して相手は,中盤からの積極的なボールへのアプローチが目立つものではなかったものの,最終ラインは丁寧な守備応対を繰り返し,なかなか決定的なクラックを見せることがなかったようにも思う。


 決定的な問題を抱えてはいないものの,どこかで微妙に糸が絡み合っているかのような印象が好転したのが,後半だったように思う。


 バランサーとしての高いポテンシャルを持った選手が巧みにポジション・チェンジを繰り返しながら攻撃を組み立てていく。ミッドフィールドでの流動性が高まることによって,攻撃のリズムが生まれていく。また,シャドー・ストライカーがトップにより近い位置に入り,イニシャル・ポジションを左サイドとしたメリットとして右サイドにプレー・エリアがしっかりと作り出せるようになり,アウトサイド,あるいはレジスタが積極的なポジション・チェンジの中から突破をかけられるようになっていく。
 強烈なボレー・シュートによる先制点奪取によって,相手守備ブロックを縦方向に引き出すきっかけをつかむと,攻撃のリズムがさらに好転していく。単独突破とコンビネーション・プレートのバランスが良くなることで,プレッシングに入るタイミングを与えることなく攻撃を組み立てていくことが可能になる。また,昨季はあまり見られなかったシザースなどのスクリーン・プレーが看取できるようになり,コンビネーションのさらなる熟成が感じられたゲームではなかったかと思う。


 1トップ2シャドーは存外,しっかりと機能させるのが難しいシステムかな,という感じがします。


 うまくトライアングルを維持しながら攻撃を組み立てられるならばそれほどの問題はないようにも感じるのですが,実際には限りなくフラットなトライアングルになってしまう局面もあるし,逆に頂点と底辺が適切な距離を保つことができずにかなり間延びしてしまったトライアングルになってしまうこともある。この点を修正するために,はっきりとポンテ選手を前線に限りなく近いポジションへと上げたのかな,と感じます。
 ボールを預けるポイントが増えることで,後方から押し上げていく(あるいは,より積極的に前線に飛び出していく)動きを引き出すことができる。小野選手や長谷部選手,そして当然闘莉王選手などが最前線へとよりスムーズに飛び出していけるようになっていったような感じがします。


 ただ,1トップ2シャドーというアイディア自体に問題があるわけでもないと思うのです。


 トライアングルの距離を適切に維持することができるならば,決して機能しないものでもない。後半での修正がある種のヒントになれば良い。そして,コンビネーションがさらに熟成されれば,より自然な形でボールが走るようになるのではないか。そんなことを感じたゲームだったように思います。