Switch.
比喩的に,浦和の攻撃スタイルを表現するならば。
どれだけ速くトライデントをゴールマウスに突き刺すことができるか,というイメージになるかと思う。
ショートレンジ・パスを細かく繋ぐことでディフェンス・ラインに綻びを生じさせる,と言うよりも,スペースを強く意識したシンプルなパス・ワークからアウトサイド,センターのスピードを生かして相手守備ブロックを断ち割る。ミッドフィールド,特に攻撃的なミッドフィールダーに要求されるパフォーマンスがミドル〜ロングレンジ・パスの正確性であったり広い視野であったことは偶然ではないように感じる。
現指揮官の就任とほぼ時期を同じくして,そのスタイルに変化が現われる。
攻撃的なミッドフィールダーに求められる能力が,古典的な10番のイメージと大きく重なるものから,積極的に前線に飛び出していくことでゴールを奪う“トレクワトリスタ”のイメージへと近付いていく。ミッドフィールドに構成力と同様,あるいはそれ以上に攻撃力を要求するスタイルへと段階的に移行してきたと見て良いように思う。
そして,今季序盤は否応なくミッドフィールドの構成力と攻撃力とのバランスがチームとしての攻撃を織り成す大きな鍵を握ることになる。
チーム全体に,ミッドフィールドの構成力(展開力)が重要な意味を持つという共通理解はあるのだろうと感じる。ただ,その先にある「攻撃力」をどう形にするか,というイメージがなかなか描けずにいたのではないか。
前半,細かいパスワークから相手ディフェンス・ブロックを崩そうという意図は感じられたものの,その意図をDNAとして持っている「スピード」,そしてそのスピードを最大限に活かすスペースへの意識と有機的に結び付けられずにいたような感じがする。
決定的な問題とは言えないものの,どこかに膠着した印象を拭えなかった前半。そんな空気を振り払ったのが,後半開始直後の強烈なボレー・シュートだったのではないか。
前半膠着しているかのような印象を受けたのは,それだけミッドフィールドを構成するプレイヤーのポテンシャルが高いということを示しているようにも思います。
ポゼッションを高めながら相手を崩していく,という方向性も決して間違ってはいないと思う。ただ,パス・ワークとスペースへの飛び出しがもっと前半立ち上がりの段階から結び付いていて良いと思うのです。
センターのスピードを代表する達也選手が戦線離脱しているいま,そのセンターのスピードを補えるのはミッドフィールドからの積極的な飛び出しだろうと感じます。攻撃に厚みを持たせるためにも,シャドー・ストライカーの役割は昨季以上に重要なものになっているはずです。
そんな観点から見て,セレッソ戦後半がチームが新たな攻撃スタイルを手にするための“Switch”になればいいように思うのです。