当然の帰結。

マーケティング,あるいはマーチャンダイズという側面から言えば。


 誰もが知るフットボーラーを獲得し続け,話題を提供していけば市場を大きく拡大することができる,かも知れません。クラブ・マネージメント,特に入場料収入以外に関する財務面だけを考えれば一定程度の合理性が認められるようにも見えます。


 しかし,フットボール・クラブが訴求すべき魅力,その源泉は何に求めるべきでしょうか。


 「チーム」が強さを見せつけ,たとえ長きシーズンの終わりにマイスター・シャーレを掲げることができなくとも,常に勝利に向かう姿勢をとり続けることがクラブの魅力を作り出す大きな要素ではないでしょうか。そのために戦力補強は機能するべきでしょう。チームがダイナミズムを失わないために。そんな前提条件を考えたときに,果たしてフロレンティーノ・ペレスのアイディアは“フットボール・クラブの本分に照らして”正しい方向性にあったと言えるでしょうか。


 ・・・「銀河系軍団」などという,もっともらしいキャッチフレーズがついて久しいですが。木村浩嗣さんのコラム(gooスポーツ:NumberWeb)を読んでいくと,レアルは戦術以前の問題を抱え続けてきたな,という印象を新たにします。特に,

 心が壊れたチームは、逆境に踏ん張れない。・・・中略・・・最悪なのは、責任回避、無関心の冷たい空気が生まれることだ。不仲で言い争いをしているうちはまだいい。喧嘩をするのは勝利に対するこだわりがある証拠だ。それすら通り越して「俺のせいではない」、「私には関係ない」という感情が少しでも生まれると、それはプレーに確実に悪影響を与える。(前掲コラムより引用)


という表現には,レアルが抱えてきた問題が端的に示されているように感じます。


 どんなに指揮官が明確な戦術的なイメージを提示しようとも,その戦術的イメージを受け取り,ピッチに表現するフットボーラーがまとまろうとしていない。ハートの部分でそもそもまとまることのできないチームが,戦術的なピクチャーを共有できようはずもない。本来,チームのダイナミズムを高めるためのものであるはずの戦力補強が,逆にチームからダイナミズムを奪い取る方向に作用してしまった。これ以上の不幸はないように感じるわけです。


 反面で,ひとりひとりのフットボーラーが持っている能力が高みにあることは疑いようがないものです。それゆえ,すべてがポジティブに作用すれば強さを発揮するものの,何かが狂いはじめると木村さんが指摘するように踏み止まれないのではないでしょうか。レアルの成績が不安定であり続けた原因は,恐らく戦術的な問題などではなく,プレイヤーのハートにこそ求められるものだろうな,と思います。それならば,“無冠”というのもある意味「当然の帰結」なのかも知れません。