設計図と基礎構造。

確かに設計図を描き出すのは“プロフェッショナル”です。


 描き出された設計図がイメージと異なるようであるならば,実際に作られるものも思い描いたイメージとは違う可能性が高い。ならば,自分が持っているイメージをより明確に描き出してくれるだろうほかのプロフェッショナルに仕事を依頼し直す。当然のことだと思います。


 しかし,その設計図のもとになっているのは注文主のイメージだし,そのイメージがあまりに抽象的だとすれば,いつまでも具体的な設計図,そして完成品は見えてこないのではないでしょうか。まして,基礎構造など作りようもありません。問題にすべきは,注文主が思い描くイメージなのかな,という感じがします。


 以前,「戻るべき場所」という表現を使ったことがあるかと思います。


 指揮官が代わろうとも,クラブとしての個性のようなものは消えないように感じます。ポゼッションを長く指向していたクラブはどこかにポゼッション重視のスタイルが見えるし,カウンター・アタックの鋭さが代名詞であったクラブはポゼッション指向を強めようとも,どこかでカウンター・アタックの鋭さが見えてくる。知らず知らずのうちに出てくる,伝統に裏打ちされたスタイルと言い換えるべきものかな,と思います。そういうものを具体的にクラブサイドのひとたちが思い描いていたか。


 昨季,迷走状態に陥った草津が「衝撃的」とも言える開幕戦勝利を飾った理由には,今季から指揮官に復帰された植木さんが「草津が持っているべきイメージ」について以前の経験などから明確なピクチャーを持っていたことがポジティブに作用した結果というものがあるだろうと感じます。


 恐らく,植木さんは相当ベーシックな部分からチームを組み直していったのではないか,と感じます。そして,植木さんが作り上げようとしているものが草津として「戻るべき場所」,絶対的な拠り所なのだろうと感じます。現在作り上げている基礎構造が間違っていない,という確信が「勝ち点3」という客観的な数字によって導かれる。そのことで,本格的な上屋構造物へのステップが踏み出せる。


 先を見据えることのないチーム強化はあり得ないでしょう。


 しかし同時に,しっかりとしたステップを作り上げることなしにチームを進化させることも不可能だろうと感じます。草津がクラブのこと,そしてチームをよく知る指揮官を再び招聘したことはともすればこういうことを示してはいないか。


 設計図はステップ・バイ・ステップでしか描けない。基礎構造をしっかりとしなければ,最終的に作り上げるべき上屋構造物も立てられない。


 言ってみれば当然のことなのだけれど,この「当然のこと」をしっかりと積み上げていかないと戦えないということを示しているのかな,と感じるわけです。