対インド戦(アジアカップ予選・短信)。

攻撃面に限定しての印象ではありますが。


 それとなく,“ムービング・フットボール”に近付いてきたのかなという感じでしょうか。


 最近の代表戦では「足下に入るパス」が比較的強く印象に残っています。
 パス・レシーバーがスペースに走り込みながらパスを受けるという形が少ないために,組織的なディフェンスを展開するチームに対して有効な局面打開策を打ち出せなかったという図式の中にあったような印象があるわけです。


 しかし,今回のゲームではかなり現代的な攻撃内容へと変化したように見えます。


 ということで,アジアカップ予選という「結果を最大の眼目とする」ゲームにもかかわらず,いつものようにゲーム内容にはあまり立ち入らず,感じたことを短めに書いていこうかと思います。


 ゲームメイク,と言うと中盤高めの位置でボールを散らすというイメージがあるのでしょうか。「トップ下」という響きには「ゲームメイカー」というニュアンスがかなり重なっているように思います。
 しかし,ミッドフィールドでの積極的なディフェンスからの素早いトランジションがある種の必須要件である現代的なフットボールでは“ディフェンシブ・ハーフ”(あるいはボランチ)のポジションが重要であるように感じます。それだけに,トップ下が単なるパサーとして機能するだけでは不十分であり,FWとのコンビネーションの中から積極的に前線に飛び出していく,という“アタッカンテ”的な要素も同時に求められているように思えるのです。


 加えて,局面に応じて積極的にディフェンシブ・ハーフを前線に送り出す動きも求められる。
 「コンビネーションから生まれる流動性」こそが,攻撃面と守備面とを問わずモダン・フットボールを実現する大きな要素ではないかと思うわけです。ボールを走らせるだけでなく,スペースが埋められているならばディフェンス・ラインの僅かなギャップを積極的に突く,あるいはディフェンス・ラインを縦方向や横方向に引き出すことでギャップを生み出す動きが必要なはず。そういう動きは,ほかの選手のしっかりとしたカバーリングがあってのこと。
 ただ,代表戦ではなかなか流動性をピッチから感じ取ることができなかったように思っているのです。そういう感じを吹き飛ばすファクタとなったのが,巻選手や佐藤選手,そして長谷部選手が見せたアジリティではなかったかな,と。彼らが積極的にスペースに飛び出す,あるいはスペースを作り出す動きを見せたことでチームが流動性を持つきっかけができたかな,と感じたわけです。
 とは言え,いわゆる格下相手ですから過大評価をすべきではないことは当然です。それでも,後半の動きは「やっと」代表の攻撃スタイルがモダナイズされてきたのかな,という感じで見ていました。


 問題は,ポゼッションが難しい相手に対峙したときでしょう。


 どういう形でボール・ホルダーに対してアプローチをかけ,ボールを奪取するのか。その意味で,フィジカル・コンディションが高負荷状態を続けていたことで低下していたアメリカ戦は非常にもったいなかった。あれだけコレクティブな戦術を展開するチームと対戦できるチャンスはなかなかない。もうちょっとコンディショニング(ピーキング)をしっかりしておけば・・・,と思ってしまいます。それだけに,本当の意味での“テストマッチ”はドルトムントで行われるボスニア・ヘルツェゴビナ戦ではないかと感じています。