浦和とブーツルーム。

すべてがポジティブな方向に回転しているからこそ,こちらの記事(埼玉新聞)のような話が出てくるのだろうと思います。


 当然,クラブサイドの指揮官に対する信頼,そしてある種の覚悟がなければ長期政権は成立しません。イングランドでは比較的長期にわたって指揮を執るひとが多いようですが,それでもポジティブ・スパイラルの中ですべてをこなせるひとは多くはありません。90年代後半から覇権を争い続けていたマンチェスター・ユナイテッドガンナーズのボスが最近では「長期政権」の代名詞でしょう。


 そういう意味で,クラブをよく知る人間が指揮を執るというのは体制を安定させるひとつの要素である,という見方もあるかと思います。


 「ブーツルーム」という呼び方があります。


 リヴァプールを代表する名将である,ビル・シャンクリーがマネジャーとして活躍していた時代にアシスタント・コーチを務めていたのがボブ・ペイズリー。その後マネジャーに就任し,“シルヴァーウェア・コレクター”という異名とともにリヴァプール黄金時代を築き上げたひとです。ペイズリーのような有能な指揮官を生み出す背景となったのが,トレーナーやコーチ陣と築き上げた緊密な人間関係であり,そんな彼らの慣習,伝統を表す言葉としてコーチング・スタッフが相談の場としていた部屋である「ブーツルーム」が使われるわけです。


 ちょうど,いまの浦和はそんな感じかも知れません。


 ヘッドコーチを務めているゲルトさんは外部からクラブを見ていたひとであり,そういうひとと良好な関係にあるというのは大きいことです。同じように外部から新たな視点をクラブに提供してくれていた(育成手腕も評価されていた)柱谷さんが抜けてしまったのは確かに痛手ではあるけれど,コーチング・スタッフが良好な関係にあることは十分にうかがえます。そんな状態だからこそ,長期にわたる指揮という話が出てくるのだろうと思います。