対フィンランド戦(短信)。

クロアチアを仮想敵として,などというマッチメイクなのでしょうけれど。


 今回はそれ以前の問題を抱えていただけに“ファイナル・スコア”と得点に至る過程をチェックしなければならないゲームだったのではないか,と感じています。


 こう見てくると,今回のインターナショナル・フレンドリーはいつものゲームとは違う意味を持っていたように感じます。とは言え,いつものようにファイナル・スコアを度外視しながら短めに話を進めたいと思います。


 チームとしてのダイナミズムは明らかに良い方向へと変化した。


 そのことは前半の段階から看取できたように思います。ミッドフィールドでショートレンジ・パスを積極的に回しながらリズムをつかむと言うよりも,ミドルレンジ〜ロングレンジ・パスをボランチの位置,それよりも若干自陣に近い位置から前線,あるいは左右アウトサイドに展開することで相手ディフェンスラインを横方向へ引き出す,という意識が全体に強い感じがしました。
 また,深く攻め込んでいるときに相手にボールを奪われた後,早い段階でボール・ホルダーに対してプレッシャーを掛けることでパスコースを限定したり,時間帯によってはかなりハーフコート・カウンターを意識したような仕掛けが見えていた。ボールに対するアプローチが全体的にルーズ(=それゆえ,どうボール・ホルダーに対してアプローチするべきか,チームとしてのピクチャーが描けていないように感じられる。)で,DFラインにかかる負担がかなり大きいように見えたSBCパークでのゲームから考えれば,しっかりとした戦術修正ができてきたなという感じがします。


 また,「スペース」を強く意識したパスワークが多く見られたように思います。


 足下に収まるパス,と言うよりもスペースに対してボールを出し,そのオープンスペースにパス・レシーバーが走り込む,という形が比較的多く見られたように感じます。アウトサイド・プレイヤーが縦へのスピードを維持した状態でボールを受け,ディフェンスを破りながら中央へと折り返すプレーが今回のゲームではしっかりと見られた。


 単純にシステム論に落とし込むのは早計だろうと思うけれど,相手ボール・ホルダーに対するプレッシングの掛け方,数的優位の構築方法やそのタイミングなどに大きく関わる「距離感」という部分を考え,またミッドフィールド,アウトサイドと前線との連動性を考えると2トップという形はバランスが良いかな,という感じがします。
 1トップ2シャドーという形も中盤でのタレントを活かすひとつのアプローチかなとは思いますが,積極的に最前線へと飛び出す動きがシャドーに見られないと実質的に1トップが孤立する状況に追い込まれてしまう。また,アウトサイドとの距離感が整理されていないとボランチやアウトサイドが攻撃参加するにあたっての“ノッキング・ファクタ”にもなりかねない。


 決して1トップ2シャドーが間違っているとは思わない。むしろ,ミッドフィールドとアウトサイドとの戦術的連動性が熟成されていくならばある種の最適解かな,と思う部分もある。しかし,実戦を通じて戦術的な熟成を図る,という日本代表のチーム構築アプローチを考えると引き出される解答はちょっと違うようにも思う。プレイヤーがピッチで窮屈さを感じない「距離感」を維持できるのは現状にあっては3−5−2なのかな,と感じるのです。