日本選手権・準決勝を前に。

ひさびさに実現した「大学王者と国内最高峰リーグ覇者との直接対決」


 それだけに,トップリーグ・チャンピオンである東芝府中ブレイブルーパス,全国大学選手権覇者である早稲田大学ともに,心中期するところがあるようです。スポーツ・メディアの中でも比較的ラグビーフットボールの扱いが大きいサンスポさんでは,東芝府中に関する記事早稲田に関する記事を扱ってくれています。


 中でも,東芝府中の主将である富岡選手の

 トヨタに勝ったチームですから、学生とか考えず対等の相手として戦います」
 「ここで負けたらTLを設立した意味がなくなる。ラグビーファンのためにも、TLの強さをみせつける」


というコメントはお互いにとって良い刺激になるだろうと感じます。


 トップレベルにある社会人クラブ・チームは1980年代後半から90年代にかけて,徹底してチームを強化するためにラグビー・ネイションからコーチング・スタッフを招いたりして最先端の戦術を積極的に吸収したり,練習環境の整備などを実施することで大学チームを突き放しにかかった。日本選手権が一発勝負のゲームから,大学選手権上位と社会人上位とが戦うトーナメントへと形態を変えたのも,大学チームと社会人チームとのレベル格差が広がったため,と見ることができます。
 しかし,今季日本選手権での早稲田は,そんな状況に対する強烈なカウンター・ブローだと思います。
 1回戦ではクラブ大会チャンピオンであるタマリバクラブを相手に安定した戦いぶりを示し,2回戦ではTL勢の一角を崩す。間違いなく,この良い流れを準決勝に持ち込みたいと思っているはずです。また,本気になったTLチャンピオンと対戦できることは願ってもないことでしょう。
 対する東芝府中としても,TL覇者としての矜持がある。3冠達成を再び現実的な射程に収めるためには,大学チームだろうと同じTL勢であろうとも単に「倒すべき相手」でしかない。ゲームへの入り方を間違えてしまえば,東芝府中といえども苦戦を強いられる可能性がある。それだけに,ゲームに臨むにあたって“ファイティング・ポーズ”を確認しておく必要がある。そんな背景があってのコメントなのかな,と感じます。


 来季からサントリー・サンゴリアスの指揮官となる清宮監督にしてみれば,サンスポの記者さんの言うように日本選手権が「前哨戦」ということになるでしょうが,ワタシとしてはやはり,「往年の日本選手権」が帰ってくる,という感じがします。しかも,清宮さんは堀越さんや今泉さんたちとともに社会人を倒した経験を持つ。何か,期待してしまうものがありますね。