FIFAのリリース(短信)。

FIFA規律委員会がチューリッヒの本部で開かれ,2005年11月16日にイスタンブールで行われたトルコ−スイス戦(ワールドカップ予選ラウンド・プレーオフ)での“incidents”(=同時多発的に複数の暴行事件が発生したことを指していると思われます)についての処分が話し合われた,とのこと。


 で,ごく簡単にメディア・インフォメーション(FIFAオフィシャル)に掲載された処分内容を読んでみると,トルコに関しては今後行われる国際試合をFIFA加盟の第三国,かつトルコ国境から500km以上離れた場所で観客を入れずに行い,ゲーム開催にかかるコストをすべて負担することが求められています。制裁金に関しては合計22万スイスフラン(純然たる制裁金が20万スイスフラン,規律委員会にかかる手続費用が2万フラン)が課される,とのことであります。また,事件に関与した個別の選手に対する処分内容も同時に発表され,トルコサイドの選手については最大6試合(選手により2試合)の国際試合(代表戦)出場停止と最大1万5000スイスフランの制裁金,というものであります。


 ・・・今回の決定はあくまでも概略を示したものであり,トルコ,及びスイスの各FAに対しては30日以内に詳細にわたる処分理由を示したものが追って送付される,とのことであります。また,スポーツ仲裁裁判所(CAS,ローザンヌ)にこの問題を持ち込む前段階として,FIFA上訴委員会が最終決定を下す,ということですから,まだこの決定が完全に確定,ということではないようであります。


 最も気になっていたのはもちろんアルパイ選手の処分内容でありましたが,「落ち着くべき線に落ち着いた」という見方もあるように感じます。国際試合への出場停止は最も長い6試合に及び,制裁金額も最高額となる1万5000スイスフランが課される。事件当事者に対する処分内容に関して,重いものか,それとも妥当なものであるのか軽いものなのか,という部分は置いておこうと思います。


 ただ,少なくとも事件直後にブラッター氏が規律委員会が開催されていないにもかかわらず具体的な処分内容にまで言及するかのような「思慮に欠けた」発言をしていたことから見れば,事件によって引き起こされた結果に対する制裁,特にトルコFAに対する制裁としては一定の妥当性を持つものではないか,と考えます。


 理由はどうあれ,引き起こされた結果について当事者ならば責任を負わねばならない。それよりも,この事件をどう今後に生かしてくれるのか,という部分を注目したいな,と思います。理性によってコントロールされていないファイティング・スピリットは危険なものとなりかねません。以前のエントリにも書いたことですが,アルパイ選手が高いポテンシャルを持ったフットボーラーであることは承知しているし,ハートにも共感するものを感じます。であればこそ,今回の結果をポジティブなものとして今後に生かしてほしい,それこそネガティブなバイアスがかかっているかも知れない人間の見方を大きく覆すきっかけにしてほしいと思うわけです。