魅力的な「規格外会場」。

いわゆるキャパシティを考えると,確かにJリーグ規格というのはよく考えられたものだな,と感じるところがあります。


 プロフェッショナルである以上,「興行」という側面は決して無視できないし,観客収入はスポンサー収入と並んでフットボール・クラブの財政を支える重要な要素でもある。その物理的なベースとなる収容観客数が小さいとなると,経営規模がいつになっても大きくなっていかない,という問題を抱えることになる。
 反面で,立ち上がりの段階からあまりにも大きなキャパシティを誇るスタジアムをホームとしては,使用コストがクラブ経営を圧迫するというリスクも考慮しなければならない。


 これらの要求を一定水準で充足する「ベスト・コンプロマイズ」というか,「最大公約数」がJ規格だったのかな,と思うのです。
 しかし,「規格外」とされるスタジアムだって十分に魅力的だな,と思ったりするわけです。時事通信配信のニュース記事(スポーツナビ)にある,東京ヴェルディによる駒沢公園,及び西が丘の使用に関してJリーグ理事会の承認が下りた,ということを読んでそんなことを思うわけです。


 確かに,プロフェッショナルの興行を打つには設備的に見劣りもするし,快適な観戦環境というわけでもない。だけど,跳ね上げ式のシートじゃあなくても,バックスタンドだけじゃなくてメインスタンド側の屋根すら(メディア関係者向けの一部スペースをのぞいて)付いてなくとも,西が丘のようにピッチと観客席との距離が物理的に近く,選手たちのコーチング(ときに怒号)が明瞭に聞こえ,あるいはサブの選手たちが後半開始直後からアップのペースを上げていくのが手に取るように分かる,というのは得難いな,と思うわけです。


 大宮公園を改修するにあたり,相川市長は「高校サッカーの聖地にしたい」という意向を話されたとか。西が丘や駒沢公園も,高校サッカーで使われる機会の多いスタジアムですから,(必要最低限度でも良いから)改修しても良いのに,と思ったりするのです。


 そのきっかけになるのが,実はプロフェッショナルによる興行かな,と。


 ピッチであれ,観客席であれ日頃J規格に慣れているひとたちはどこが不便に感じるか,明確な指摘ができる「大切なお客様」だと思うのです。その意見を吸い上げ,上手に活かすことができれば,歴史あるスタジアムが埋もれることなく活用されていくのではないか。
 役割を終えた,と言ってしまうのは簡単だけど,歴史を上手に引き継ぎながらアップデートを繰り返していく,というオールド・トラフォードのようなスタジアムの育て方,というのもあるんじゃあないかな,と「規格外」の会場を見ていると感じるのです。