早稲田大学対関東学院大学戦(大学選手権決勝)。
早稲田の指揮官・清宮監督によれば「史上最強」とのこと。
局面を取り出せば,確かに史上最強という言葉に掛け値はないな,と思いますが,ゲーム全体を俯瞰すれば彼らが目標とするトップリーグ勢,しかも2季連続の覇者となった東芝府中ブレイブルーパスのような「圧倒的な」感じはしませんでした。むしろ,関東学院大学との間に横たわるのは恐らく「僅差」ではなかろうか,と感じます。
ただ,80分プラスのゲームの中で,その「僅差」が集積していっているように思うのです。
・・・まいどの通り,1日遅れで書きはじめております。
最初に書いてしまうと,ファイナル・スコアは41−5。早稲田がその実力をしっかりと見せ付けた,という表現が当てはまるだろうと思います。
ただ,関東学院と早稲田を分かつものが大きく横たわっていたか,と考えると,個人的にはそんな印象はないのです。冒頭で書いたように,「僅差」でしかない,と。とは言いながら,その僅差をしっかりと生み出せる,ということ自体に早稲田の強さがあるな,と感じるのです。
まず,選手権覇者に敬意を表して早稲田大学のことから書いていきますと。
決して,早稲田の攻撃スタイルはラグビー・ネイションを強く意識したモダン,あるいはアバンギャルドなものではないな,と思います。攻撃ブロックが密集を作ろうともさほど崩れることなく,波のように相手チームに対して襲い掛かる,ブレイブルーパスのような圧倒的な感じはありません。
ただ,彼らと共通する部分として指摘できるのは「高いアジリティ」と「判断スピード」,そしてそれらを有機的に結び付ける「バランス感覚」ではないか,と思います。
まず,FW,BKともに「縦」に対する強い意識を持って,相手守備ブロックに綻びを見つければ積極的にその綻びを突く。また,モールやラックに対しても徒に人数をかけるのではなく,その先のプレーを見越したポジショニングを意識しているように感じます。そして,ポイントが崩れた後のポジショニング修正も比較的早い。そのために,相手の仕掛けに対して常に余裕を持って対処することができる。また,ターンオーヴァからの攻撃イメージがかなり具体的なものとして共有できている。フィールドに立っている各選手の「個人能力」が強く,その個人能力が巧みに組み合わさっていることによって組織が安定して機能している。そんな印象がありました。
対する,関東学院大学でありますが。
前半早い段階,ゲームの主導権が揺れ動いているときに自陣でのディフェンスに忙殺された,ということがかなり大きく影響したかな,と感じます。立ち上がり,早稲田も決してフル・スロットルというわけではなかったように思います。コメンタリーの方も指摘していたように,ラインアウトをキープできないことでリズムを微妙に崩していたところがありました。そのリズムのズレを突きたかったのですが,自陣でのディフェンスに追われてしまう時間帯が多く,大きく地域を回復することができなかった。
また,細かいことを言えば,ライン・ディフェンスを敷いているときの対応,そしてモールやラックという密集に対する対応にちょっとした問題を感じました。
基本的に関東学院のディフェンスもフラットな陣形です。フラットであることの最大のメリットは,ボール・ホルダーへのアプローチを速めることができること。しかし,数的優位を存分に生かしてボール奪取のポイントとする,というところまでが見えづらかったかな,と感じます。そのために,ラインを破られるケースもあったように見えます。
そして,密集にかける人数が多いことも一概に問題とは言えないのですが,その密集からボールが出てきた(特に,マイボールを奪われてターンオーヴァとなったとき)に,守備に割ける人数がそろっていない,という部分は修正の余地があるかな,と感じました。
ともに,フォーマットはそれほど変わらないように見えます。
しかし,アジリティや判断スピード,そこから導かれる高いバランス感覚という「個」の部分で早稲田と関東学院との間には差があった。関東学院としては,その差をどう埋めていくのか,という課題が残ったのではないか,と思います。
そして早稲田は全日本選手権に向けて,さらなる組織面での熟成を図ってくるはずです。昨季,トヨタ自動車ヴェルブリッツを追い詰めたわけですから,さらにそのうえを狙ってくるはずだし,カード次第では可能性は高いはずです。期待しています。
さて,早稲田のことを書いたので,ちょっと業務連絡をば。ただ,いつものように長めですし,本編とはまったく違いますので畳みますです。
2006年の声を聞こうか,というあたりから特定のエントリにお越しいただける方が増えてきておりまして。
地味に書きはじめた頃の「ラグビー全日本選手権 - トヨタ自動車対早稲田大学。」というエントリを検索エンジンなどからお探しになってお越しになる方が。
それ以上に,検索の先頭にきていることもある,というのは正直驚きでありますよ。ありがたいお話しであります。
あの時,ワタシは早稲田OBでもないのに本気で早稲田の勝利を願い,どこかでもったいない思いを抱えながら記事を書いていたように思います。もう1年近くもたとうか,という記事をチェックしにお越しいただける。感謝であります。
ありますが。
今季の選手権はまだ開催されておりませんですよ。ワタシだってチケット申し込んだ程度なんですから。それにですよ,トーナメントの組み合わせ(サンスポ)は発表されておりますが,その完全限定の指定席を完全に獲得できたチームは現段階で3チーム。トップリーグ優勝を決めた東芝府中ブレイブルーパスと,本日行われた大学選手権決勝に駒を進めた早稲田大学,そして関東学院大学であります。で,ほぼ予約完了と見られるのが最終節で3位以内を確定した三洋電機ワイルドナイツ。NECグリーンロケッツとトヨタ自動車ヴェルブリッツは最終節の結果次第でしょうね。
それと,マイクロソフト・カップ,全国クラブ大会の覇者がどこになるのか,ということとトップ・チャレンジシリーズの1位チームがでてくるわけですから,まだ不透明な部分の方が多いわけであります。
でありますれば,今季の「本編」に関してはいましばらくお待ちのほどを。実地とTVで面白そうなカードはおさえていきたいと思っております。