対大宮戦(天皇杯準決勝)。

チームはある意味,“ポスト・シーズン”であるカップ戦を通じて成長し続けているように思う。


 技術,戦術的な部分だけでなく,心理的な部分が成長し続けているのではないか,と。


 先制点を早い段階で奪取し,心理的な部分で優位に立ちながらゲームを進める。


 戦術的な側面以上に心理面が大きく影響するように見えるカップ戦では,心理面でどれだけ「普段通りに」ゲームに入っていけるか,が大きな鍵を握るように感じる。そして,決勝戦が具体的に視野に収まってくる準決勝という難しさが,心理面に出ていたように思う。本来ならばチームのリズムを作り出すはずの中盤が,相手の厳しい(局面によっては,限りなくストリクト・マンマークに近い)チェックによってうまく機能せずにきていたということもあるだろうが,リズム感が微妙にいつもとは違うような感じがした。


 それでも,セットプレーから先制点を奪取し,主導権を握るか,と思われた。しかし,FKから失点を喫し1−1で前半を折り返す。


 前半はどこかに硬さを垣間見せ,本来持っているはずのリズム感が感じられずにいたチームだが,ハーフタイムを経てリズムが戻ってきたように感じる。中盤でのダイレクト,あるいはツータッチ程度からの素早いパス・ワークの中からリズムを生み出し,攻撃を組み立てていく,という今季のスタイルを見る時間帯が次第に多くなり,そのなかから追加点が生まれ,再びリードを築き上げる。
 対する相手は中盤での攻防を嫌い,ロングレンジ・パスを多用した攻撃へとシフトしていく。そのため,チームは全体に引き気味に位置してしまい,自然と守備意識が高まっていったことと合わせてチームが持っているはずのリズムが再びズレていったようにも感じる。終了直前の時間帯での失点は,「勝利」というものを意識するがゆえの心理的な隙,とでもいうべきものを相手に巧みに突かれた結果,というように見えた。


 掌中にしかけていたものがこぼれ落ちる。


 それでも,ショート・インターバルを経て心理的なダメージを(少なくとも表面的には)感じない戦いぶりを延長戦では終始見せてくれていたように思う。ストリクト・マンマークに近い組織守備を90分プラス続けてきたダメージなのか,相手の出足は鋭さを失っているように見えた。対して,中盤にフレッシュな戦力を投入し,ダイナミズムを取り戻した浦和は積極的なボール回しから再びリズムを取り戻す。そのなかから,2点を積み上げ,ファイナル・スコア4−2で決勝へと駒を進める。


 いつも通り,1日遅れです。


 簡単なゲームを難しくしてしまった,という部分もあるのかも知れません。
 しかし,カップ戦とはこういうものだろう,とワタシは思っています。「勝つこと」だけが次への切符となるのだから,リードした途端に守備意識が高まってしまうのは仕方ない部分もあると思うのです。攻撃的な意識に傾いていた振り子が大きく反対側(守備的な意識)に振れ過ぎてしまったために,その隙を相手に突かれた,ということだろうと思います。
 それでも,延長戦に入ってからのチームは“スタイル”を押し出すことでリズムをつかみ,相手を突き放すことに成功した。リーグ戦では残念ながら「勝ち点3以上の意味を持ったゲーム」でメンタル・タフネスを見せ付ける戦いぶりを見せることはなかったように思うけれど,ある意味ポスト・シーズンとも言える天皇杯のゲームでは心理面での強さを見ることが多いように思えます。強いメンタルとスタイルを押し出し続けるという意識が噛み合うことで,勝利をつかみ取った。このことは間違いなく,来季を含めた「次」に向けた大きな財産だと思います。