仕掛けるタイミング。

先ほどのエントリでちょっと書ききれなかったことを「追記」してみよう,ということで新しくエントリを立ててみました。


 湯浅健二さんは「典型的なカップゲーム・コンテンツ」という表現をされていましたが,“勝ち続けること”こそがカップを掲げる条件である以上,ゲーム立ち上がりから攻撃的な姿勢を前面に押し出す,と言うよりもむしろ相手の出方を慎重に探りながら攻撃のタイミングを慎重にはかる,という姿勢が前面に出ることは一定程度は仕方ない部分があるかな,と思うのです。
 湯浅さんのイメージを具体的に書けば,相手のカウンター・アタックを封じるためにもFW,トレクワルティスタがレジスタ,あるいはディフェンダーを前線へと送り出す動きをする,あるいはアウトサイドとレジスタがポジションを入れ替えながらボックス付近での厚みを増し,可能性を高めていくことが必要,という感じでしょうか。確かに,理想的な形でしょう。カップ戦にあっても,攻撃的な姿勢を前面に押し出す。できたとすれば,これ以上のことはないでしょう。


 しかしながら,と思うのです。


 積極的に全体が押し上げていくには,相応のリスクを引き受けることが求められるし,リスクをかけるべき時間帯,というものも重要なファクタとして指摘できるように思うのです。立ち上がりから自分たちの姿勢を貫くことだけに腐心してしまえば,「現実主義」的にゲームを展開しようとする相手の術中にしっかりとはまり込んでしまう。あまりに理想主義的なゲーム運びも実際にはカップ戦では選択しにくいように感じます。ここでは結構書いていることですが,「攻撃的なフットボールの現実主義的な戦略へのアジャスティング」が相手に足下をすくわれないための大きな要素としてカップ戦では求められるような気がしますし,そのひとつの答えは恐らく「積極的に仕掛けるタイミングをどの時間帯に置くか」という部分に求められるかな,とシロート目ながらに考えるのです。


 そういう部分から見ると,リーグ戦においてストロング・ポイントとしてきた攻撃スタイルを存分に表現して攻撃を仕掛けるタイミングは確かにあったな,と思います。


 数的優位,という状況にあった後半開始直後の時間帯です。実際には60分を経過したあたりからパス・ワークがリーグ戦の時と同じような鋭さを持ち,ボール奪取位置が高い位置へと上がっていきましたが,45〜60分という時間帯に60分以降と同様の積極的なパス・ワークから相手守備ブロックを崩しにかかる,という意識が働けば,相手の戦意は大きく削がれたかも知れないな,と感じます。
 流れの中で自然とギアチェンジをする,というのではなく,意識的に加速を引き出すべくシフトダウンする,という感じでしょうか。長谷部選手や啓太選手が積極的にギアチェンジを促してもいいし,もちろん主将が引っ張っていく,という形だってあります。もう一段上の強さはひょっとすれば,そんなギアチェンジの意識がどれだけチームで共有され,自然な形でできてくるか,という部分にあるかも知れないな,と思うのです。天皇杯,頂上にまで一気呵成に駆け上がることを通してこういう面での強さを身に付け,来季へのステップボードとしても機能すれば,と感じています。