原点回帰。

ピッチに立っている選手のみならず,ピットにいるリザーブコーチング・スタッフなどすべての人間がブレなく持っていなければならない共通認識。


 違う言葉で表現するならば,どういう選手がピッチに立とうとも変わることのないチームとしての戦術的基盤。そんな「戻るべき場所」をしっかりと構築するための選択かな,と感じます。


 日中クルマを使っているときに何気なく聞いていたFMラジオ。


 ディビジョン2に今季から参入したものの,苦戦を強いられていたザスパ草津の次期指揮官が,2004シーズンまで同クラブを率いていた植木繁晴氏に,という話題を耳にし,オフィシャル・サイトをチェックしてみれば公式にリリースが出ている。これらの情報を耳にし,目にした印象として冒頭書いたようなものが浮かんだ,というわけなのです。


 フットボールそのものを楽しもうと,ディビジョン1の中断期間などを利用して比較的近場でもある敷島公園に何度か足を運んでみた印象から言えば,ピッチに立っている選手たちが持っている「戦術眼」にバラツキがあるような感じがしました。


 例えば,相手ボール・ホルダーからボールを奪取することを考えるとして,どの位置でボール・ホルダーに対してアプローチをかけていくのか。そしてそのアプローチがプレッシングというレベルにまで到達するものなのか,あるいはパス・コースを限定しながら最終ラインでボール・ホルダーを確実に止めるという戦略の一環としてのアプローチなのか,という部分が非常に不明確な感じがしました。そのために,最終ラインにかかる負担が必要以上に重くなり,不十分な体勢で相手の攻撃を受け止める局面が多かったような印象があります。
 また,攻撃面でも積極的に後方からの押し上げを促す動きが少なく,FWとトレクアルティスタがアタッキング・サード付近から前のエリアでは孤立しがちだったように記憶しています。特に,トレクアルティスタは攻撃の核として相手から厳しいマークにあう局面が非常に多かったように思うのだけれど,レジスタやアウトサイドが積極的にボールを呼び込む動きが少なかったように感じます。ボールを散らすことができたならば,もうちょっと厚みのある攻撃ができていたのではないか,と。


 ディビジョン2ではある意味基本戦術となっている“キック・アンド・ラッシュ”を仕掛けるにしても,前線がポストになったあとのサポートが薄いために効果的なものになっているとは言い難いものがあります。また,アウトサイドからの攻撃も見られるものの,中央での枚数が不足しているために単発な攻撃にとどまってしまい,二次攻撃,あるいは三次攻撃と分厚く攻撃を仕掛けることがなかなかできなかったように思うのです。


 リトリートを指向するにせよ,プレッシング・フットボールを意識するにせよ“チームとして間違いなく共有しておかなければならない戦術的イメージ”を再構築する必要に迫られているように思うし,戦術的な裏付けがなければ,選手たちに「走る」という強い動機付けをすることもなかなか難しい。自由に攻撃を仕掛けていく,ということはその裏側に,強い組織的な守備意識がなければならない。2004シーズン前半,一時リズムを崩した浦和が示した部分であり,今季主力をシーズン前に欠いたにもかかわらず,ヤマザキナビスコカップを奪取することに成功したジェフ千葉がピッチで表現していることでもある。
 そんな,フットボール・クラブとしてベーシックな部分からの再構築を考えているのであれば,クラブの状況をよく理解でき,JFL時代に実績を残している植木さんに,という考え方も十分理解できるな,と思うのです。


 恐らく,基本戦術を含めてチームの再構築を図ることになるのでしょうから,サポータにも一定期間我慢を強いることになる。なかなか難しい決断か,とは思いますが,長期的に強いクラブを作り上げるためには,必要な決断だろう,とシロート目ではありますが感じるのです。