オンリーワン。

鈴鹿8耐を見はじめてから,ずっと特定のチームを追い掛けているように思う。


 ボディを“トルネード・カラー”と呼ばれる,ガングレー・メタリックとレッドのコンビネーションで塗り分け,ナイトランのために装着が義務付けられているヘッドライトを保護するプレクシをブルーに着色する,というカラー・スキームを伝統としているチームを。


 ファクトリー・チームを相手に,決して「戦う姿勢」を崩そうとはしない。


 それどころか,本気になってファクトリー・チームを倒すことが,プライベティアである自分たちの存在理由であり矜持である,と宣言するかのような気迫を見せ続ける。いつしか,そんな姿勢に何かを感じたのだろうか,どのファクトリー・チームよりも「ゼッケン12」を付けるチームに共感し,追い掛け続けているのだろうと思う。


 言うまでもなく,どんなチームにも好不調の波は否応なく訪れる。そして,不運も時を選ばず訪れる。


 このチームも例外ではない。時にはポディウムの中央を手中に収めようかというときに転倒というアクシデントに見舞われ,首位の座を奪われる。時にはスタート直後の混乱に巻き込まれ,レース開始直後にもかかわらずリタイア・リストにその名を見付けるような事態に陥ったこともある。
 それでも,このチームが放つ魅力に変わりなどないし,追い掛けるのをやめようなどと思うことは決してない。ましてや,ファクトリー・チームに引き付けられようはずもない。
 確かに「結果」も重要だけれど,結果以上に重要な何かをそのチームの中に見出し,その何ものかに強く共感するからこそ“オンリーワン”の存在となっていくのだろうと思う。


 プロフェッショナルである以上,監督やライダー,メカニックなどチームに関わる者すべてが「勝利」を最重要課題として掲げ続けることが重要なことなど言うまでもない。しかし,見ている人間までが「勝利至上主義」に陥ることもない,と同時に思う。


 同じことだろう,と思う。


 幸運,不運。目には見えないけれど,間違いなくゲームを支配している「流れ」。


 それらを含め,すべてにおいてフットボールという競技は魅力的であるのだろうし,見ているひとたちの心に共鳴する何かを作り上げていく。そんな単純なようで奥深い競技に魅入られてしまったからには,すべてを受け入れ,それでも前を向いていくしかない。無条件に共感できる“オンリーワン”がそこにある。それだけで,充分に価値があると思うから“Matchday”が待ち遠しく思えるのだ,と感じる。