対磐田戦(05−33)。

自分たちのストロング・ポイントを最大限に引き出すことなく,相手のストロング・ポイントを徹底的に消しにかかる。


 少なくとも磐田は,自分たちのスタイルをどう追い込まれようとも押し切りにかかるチームだと思っていただけに,キックオフ直後からどこか違和感を持っていた。


 その違和感は,恐らく中盤での制圧力を落としても守備ブロックの安定感を重視し,決してその構築した守備ラインを割らせない戦略がもたらしたものではないか,と思う。
 恐らく,浦和の攻撃を最終ラインを基盤とした守備ブロックで組織的に受け止め,全体が前掛かりになっているところにロングレンジ・パスを繰り出してカウンター・アタックを狙う,という戦略を取っていたのではないか。ただ,そのような意図が明確に表れた攻撃を,相手からはっきりと受け取ることは少なかったように思う。


 ゲーム立ち上がりから積極的にボールを動かし,相手守備ブロックを揺さぶりに掛かるものの,最終的な部分でしっかりとした守備応対に遭い,守備ブロックの裏に積極的に飛び出す動きが封じられる。それでも不思議と,「怖さ」を感じることはなかった。確かに,無得点に封じられはしたけれど,閉塞感を感じることはない前半だったように思う。


 その印象は,基本的に後半にあっても変わるところはなかった。


 サイド,センターと最終ラインが積極的にポジション・チェンジをしながら相手のマークを振り解こうとする。そのアテンプトがはっきりと伝わってきたし,ボールをロストした後の対応にも出足の鋭さを感じられた。その流れを加速したのは,やはり退場劇であったように思う。
 守備ブロックと攻撃陣との連携面で要になるべきポジションの人間を欠くことで,相手のプライマリー・バランスは明らかに崩れた。対して,崩れた初期バランスを的確に突くように高い位置からのプレッシングを積極的に掛けはじめた浦和。相手は明らかにボール・コントロールが難しくなり,最終ラインよりも高い位置でのボール奪取,そこからの攻撃が効果的に仕掛けられるようになり,波状攻撃,という形も見られるようになる。サイド攻撃も活性化し,今節の決勝点はサイドからの鋭いクロスから生まれる。


 とは書いてきましたが。


 正直なことを言えば,自分の中で「負けられるゲームじゃない」という意識があったから,バイアスのかかった見方だと思いますし,極力ニュートラルに見れば「危険極まりないゲーム」だったような感じがします。その代わり,フットボール・フリークのひとたちにとっては,緊張感ある良いゲームだったとも思います。


 磐田は昨季,駒場で対峙した名古屋のように自分たちのスタイルを捨ててまで浦和のスタイルを徹底的に消しにかかった。ある意味,ホームであるオールド・トラフォードで「勝ち点3奪取」という目標のためにスタイルを捨ててチェルシーに立ち向かったマンチェスター・ユナイテッドのような感じでした。違和感の正体はこれです。そして,ゲームの流れによってはその違和感がいつ恐怖感に変わってもおかしくない展開もあった。


 それでも,どこか「流れ」はあったように思います。


 「幸運」と言ってしまえば簡単だけれど,その幸運を引き付ける要素はあったように思うからです。立ち上がりからボールへのアプローチは速かったし,組織で相手を崩す,という戦略的なピクチャーが共有されていることが理解できた。ロジカルな部分でしっかりとしたものを感じられたからこそ,理屈で割り切れない要素を呼び込むことができたゲーム。そんな感じがしています.